読書感想文の書き方【執筆のプロが伝授する】
個別指導塾講師歴10年、執筆業7年の執筆・ライティングを生活の糧(一部)にしている者です。小中学生、高校生向けに読書感想文の書き方を提案します。ありきたりな書き方から受賞を目指せるかもしれない書き方まで、どうぞ参考にして作文を楽しむ所から挑戦してみてください。
大人が考えていること
第2 国語力を身に付けるための読書活動の在り方
1 読書活動についての基本的な認識
(1)読書の重要性
読書は,人類が獲得した文化である。読書により我々は,楽しく,知識が付き,ものを考えることができる。また,あらゆる分野が用意され,簡単に享受でき,しかもそれほど費用が掛からないという特色を有する。読書習慣を身に付けることは,国語力を向上させるばかりでなく,一生の財産として生きる力ともなり,楽しみの基ともなるものである。
読書の習慣を幼いころから身に付けることが大切であるが,ここでいう読書とは,文学作品を読むことに限らず,自然科学・社会科学関係の本や新聞・雑誌を読んだり,何かを調べるために関係する本を読んだりすることなども含めたものである。
国語力との関係でも,既に述べたように,読書は,国語力を構成している「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」「国語の知識等」のいずれにもかかわり,これらの力を育てる上で中核となるものである。特に,すべての活動の基盤ともなる「教養・価値観・感性等」を生涯を通じて身に付けていくために極めて重要なものである。2 学校における読書活動推進の具体的な取組
学校における読書活動については,何よりも小学校,中学校,高等学校と進むにつれて本を読まなくなる状況を改めるべきである。学校教育の中で読書の習慣を身に付けさせることは極めて大事なことであるが,読書の習慣を身に付けるまでには,苦しい期間を経験する子供たちも存在しよう。学校教育の中で読書活動を推進していくには,読書の楽しさを教えるとともに,そのような苦しさを乗り越えさせるための配慮も大切である。
文部科学省(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/04020301/008.htm)
簡単にまとめると以下のような話になります。
- 読書はとても大切だ
- 読書で調べる能力も身につけてほしい
- 読書で色んな力を身につけてほしい
- 読書が苦手な子もいると思う
- 読書の楽しさを感じながら試練(読書感想文とか)を乗り越えて欲しい
というような、大人的なというか、これまで人類が生み出し残してきたものを後世に伝えていく上での考えみたいなものがあります。読書感想文なんかを通して「いっぱい考えて、悩んで、表現してみてほしい」って所が大人が子どもに経験してほしいことで、確かにその訓練は社会人になってからものすごく大事です。
表現力は、仕事にも、告白にも、プロポーズにも、自分が欲しいモノを伝えるのにも使う能力なので、語彙力と表現を学ぶのはとても大切なんです。
読書感想文 – 基本の構成
作文・小論文を書く時にはいくつか基本の構成があります。提出される読書感想文はたいてい以下のどれかの構成になってます。読書感想文を書く時の切り口の一つにできます。
【起承転結(4段)】
最もよく言われるのがこの構成です。読書感想文で言えば
- 呼んだ本の導入・紹介
- 本の内容を詳しく書く
- 気になった描写だけ詳しく書く
- 読み終えての感想と今後
のように4段に分けて書くイメージです。小論文や論文形式にガチガチにする必要はなく、途中の「転=話を変える」なんてところも無視して構成的に4つに区切れていればOKです。この場合、いくつかパターン分けができます。
1段目:起
最初の入りで書けそうな内容は次の通りです。
- 本のタイトルと著者(書いた人)
- 本のタイトルと表紙の印象
- 本の著者とどんな人なのか
- 本のタイトルとページ数・ボリューム
- 本のタイトルと挿絵の数
- 本のタイトル・著者&いつ書かれた本か
この辺を意識して書こうとすれば、多少ネット検索やリサーチは必要になりますが、原稿用紙半分~1枚分は書けるはずです。
例えば
- 「挿絵の数が多く、表紙も~~な感じで気になったので読んでみた」
- 「2002年に書かれた私が生まれる前の本であることにおでれぇた(驚いた)」
- 「本を書いた人は他に~~や〇〇も書いていて、その中で最も興味を持ったのがこの本だった。」
というような書き方をしていけばよいかと思います。
最初の本の紹介は自身の意見がなくても調べた内容を書くだけでいいのでしっかり字数を増やせるはずです。しかも、最後の4段目結論の所でも生きてくるので、本の調査はしっかりやっておきましょう。
2段目:承
次に本の内容については以下のような切り口で書けます。
- ストーリー全体の流れと結末(5W1Hと要所のみ)
- 主人公目線での話
- ヒロインや同行者目線での話
- 敵役目線での話
- 物語やストーリーの地理的な話
- 時間軸・歴史的な「時」の話
ストーリー構成や作者の主張に関する話、本そのものの全体的な流れなんかを書きつつ、登場人物がいる場合には「主人公・同伴者・ヒロイン・ライバル」といくつかの立場で話ができます。
みんな知っているアンパンマンで例えれば
- 主人公はいつも大変そうだ
- みんなあんぱん食べてるけど、アレ頭だから
- ジャムおじさん最強じゃないかと思う
- バイキンマン比較的清潔じゃない?
- ガイコツマンだけ謎すぎる
というような感じで、それぞれの立場から見た「共感・ツッコミ・心情・同情・疑問」なんかを書いていくのが良いかと思います。
ストーリーや本の中身全体を解説した後に、それぞれの立場での共感・疑問なんかを書いていけば原稿用紙2枚目~3枚目は埋められると思います。すべての立場での考えをがんばって書けば4枚目までいけます。
3段目:転
この3段目では、これまで書いてきた内容に対しての追加の情報などを書きます。
- 本筋ではそうだったけど現実的ではない
- 主人公があの時~~した行動が理解できない
- 敵がすんなりやられすぎていておかしい&怪しい
- 時代と場所の設定が合ってない気がする
- バイキンマンが歯磨きしてるんだけど…
- この著者にしては、表現の仕方が独特で変わってる
- こういう描写があるので、この著者はきっとまだ独身ではないか
- 絶対同行者の方が主人公より強いと思う
- そんな話の展開になるのは感情的にありえない
というように、あなた自身の本編に対する意見や疑問、感覚を書き出していっても良いです。もちろん「このシーンの景色を描写する部分の表現がとても好きだった」というように、何が好きだったかで作品を語っても良いです。
本を読んだ上で、または、読んでいる途中で「全く意味がわからなかった部分」とか「読んでいて眠くなる場所だった」とか感想や実際に読んでてどうだったかを書いてもOKです。
これを書けばだいたい原稿用紙3枚目から4枚目超えて、5枚目の半分とかまでは届くかと思います。
4段目:結
最後に自身の読書感想文を締めましょう。
- 話の中に出てきた主人公のようになりたい
- 話の中に出てきたヒロインor敵のようになりたい
- この著者の他の作品も読んでみたい
- 最後まで内容が理解できなかった
- 話の展開が読者置いてけぼり過ぎて感情移入できなかった
- 説教臭い話だった
- 気づいたら徹夜で読破してた
というような形で、自身の意見が主体になるように持っていくと、感想文を締めやすいです。読書感想文は、感想を表現してなんぼのものなので「最終的に自分がどう感じたか」を
- 本の内容そのものに対して
- 登場人物に対して
- 読書という行為に対して
書いていってOKです。ここまで書くとだいたい4枚目~5枚目終わりまで到達できるはずです。
【起承結(3段)】
この3段構成の場合は、自身の感想が多くなる書き方です。論文に多い書き方で、自分語りをがっつり入れてしまえる方に向いているかなと思います。※厳密には「起承転結」の字を当てるのはちょっと違うんですが、そこは気にせず。
1段目:起
最初に書ける内容はおおかた次の通りです。
- 本のタイトルと著者(書いた人)
- 本のタイトルと表紙の印象
- 本の著者とどんな人なのか
- 本のタイトルとページ数・ボリューム
- 本のタイトルと挿絵の数
- 本のタイトル・著者&いつ書かれた本か
- タイトル・著者・ストーリー全体の流れ
この3段構成で読書感想文を書く場合は、最初の段階で、タイトル・著者・表紙・出版年・本の内容までを書いてしまいましょう。こうすることで、次の2段目で、自分のことを書きやすくなります。この時点で1枚~1枚半くらいまでは埋まるはずです。
ここまでは「起承転結」4段構成のうち「起承」を「起」だけの入れ込んだ感じなので、方向性は最初は同じです。
2段目:承
2段目では、以下のような自分のことについて書きましょう。
- この本をいつどこで読んだのか
- 読んでいる途中で何を感じたか
- 読み終えるまでにどれくらいかかったか
- ストーリーに対する感情移入の状態
- 主人公や敵への共感や同情
- 自分だったらどう行動していたか
- 自分だったらどう書いていたか(執筆側の立場になりきり)
このような内容をじっくりと、自分を語るように書けばそれだけで2枚分くらいは書けて、原稿用紙2枚目~4枚目は埋まるはずです。読書という行動をしている自分を客観的(俯瞰して、とも:読んでいる時の自分を幽体離脱した自分から見ているイメージ)に書いていく感覚でも良いと思います。
例えば「私はこの本を夏休みが始まった頃、毎日お風呂に入りながら読んでいた。読む時間を決めてはいたが、その1日の感情によって本文からの感じ方が変わっていたり、前日どこまで読んだか忘れていたりした。最も感情移入できたのは敵の部下だった。一番不憫だったと思う。勇者も手加減したらいいのに、ひどいと思う。」みたいな感じで書いていったらOKでしょう。
電子書籍で読んでいた場合はそれも書いておくと良いかもしれません。自分がその本を読んでいた環境を書くというのも、その本を読んで感じた感想に影響を与えるものです。湯船で汗だくで読む本と、布団の中で読む本は、感じ方がだいぶ変わります。大切な要素です。
3段目:結
3段構成の締めの部分も書ける内容は4段構成のものとほぼ同じです。
- 話の中に出てきた主人公orヒロインorライバルのようになりたい
- 他の作品も読んでみたい
- 次はどういう場所で読んでみたい
- 映画化されている同じ話を見てみたい
- アニメ化されているのでアニメを見てみたい
- 映画のイメージと本のイメージが全然違った
- 自分以外の誰か(友人・親・その他)に読ませたい
この3段構成では「あなた自身の思い」が多く文字にのる書き方だと思います。なので「自分だったら~してみたい」という話の締め方に持っていくのがベストかなと。とんでもなく反面教師になりそうな内容があれば「その行動を直して欲しい人に読ませてやりてぇわ」って意味合いで誰かに読ませたい、と書いてもOK。
原稿用紙の枚数の割合でいうと、本の紹介で1枚半、自分語りで3枚半、という割り振りで良いので、本に触れる時間は少し少なくても大丈夫です。自分がどう思ったかを多く書くので、いちいち本の内容を引用・再確認しなくて済みます。
【批評特化】
この場合「徹底的に反論・異論を書いて」いってください。(もしくは絶賛・賛美)その本に書かれていた内容に対して、
- ストーリーの時代背景と主人公の価値観が合っていない
- 情景が全く浮かんでこなかった
- 挿絵がイメージしてた主人公と違う
- 余計な部分の話が長い
- このシーンを書く必要性が分からない
- ここの書き方は是非真似したい
- このシーンは自分に同じことが起こった時役立ちそう
など、話の内容と自分が常に一緒にいる感覚です。むしろ、最も感情移入できているけど、自己主張が強い、または、自己のイメージ投影が強いという言い方が正しいかと思います。※作者を人格否定してはいけない。それは批評ではなく誹謗中傷。
他者の物語や小説に対して、自分の存在が最も強く、作品の中でも衰えない自己投影があって、その自分と作品内描写の違い・共感・学びを書き出していくというタイプの書き方です。自身の学びを顕在化させる書き方かもしれません。大人でもちょっとむずかしいかもしれないけど、まれにこの書き方しかできない子(才能)もいます。
読書感想文の原稿用紙、初っ端から「この本は私にとって~~なものだった」という感じの自分語りからスタートしてOKな書き方です。ただし、常に
作品の内容 VS 自分
という構図があって、そこに反論・賛成・学び・感情がついてきているという書き方になります。
気をつけないといけないのは、批評するのは「作品の内容」だけであるということ。批判や反論は比較的簡単に、誰でもできることですが、それと否定することとは全くの別物です。常に「私はそうは思わない」という自分は違うし、自分はこうだ、という話が出てきます。批判と反論と否定は別物です。ごっちゃにしないように。
【自分語り特化】
読書感想文が、もはや一つの小説や物語になるような書き方で、一番難易度が高く、一番楽しい書き方です。簡単に例えると、話の最初から少し書いてみると
この話は世界が感染症に苦しむ2020年夏の頃に合った実話である。私は、汗だくで嫌になる夏、自室にて暇を持て余していた。何もすることもないので、嫌々読書感想文の課題を進めることにした。その本の内容は「時間」に関するものでひどく眠くなる話だった。気づいた時、外は暗く、完全に真夜中になっていた。その時、私は気づいたのだ。晩飯を食い損ねたことに。~~~~~最終的に時間は大切だと、私は学んだ。
みたいな感じで、本を読んでいたら、
- その本の内容と似たような事が起きて面白かったとか
- 本に書いてあったことがそのまま起きたかもしれないとか
- 本を読んで時間をムダにしたような気がするが、成長したような気もする
みたいなことを書いても良いかと思います。自分を主人公にして、読書感想文にまつわる物語を書いてやる感覚です。
大前提として、その夏の自分の生活や人生がメインで、本はあくまでおまけ、付属品としてその読書感想文の中にあり、その読書という行いが、日々の自分にどういう影響を与えていたか(または、与えていなかったか、無価値だったか)を書いていくような感じです。
このタイプの読書感想文は賞を受けやすい上に、読者が読んでて楽しいのでむしろあり。本の内容についても書かれていて、読書体験が既にその人に吸収されていることも分かる上に、その本をちょっと読んでみたいと思える構成にもできる。背伸びして書いても良いし、純真なままを書いても良い。
感想を書く時の切り口
読書感想文を書く時のネタ切れ時に使えるかもしれない切り口を簡単にまとめておきます。
- タイトルと表紙
- 書かれた年代・出版年
- 著者と他の本や作品
- 映画化されているか
- アニメ化されているか
- マンガ化されているか
- 挿絵の数と美麗さ
- 作品本文と挿絵のイメージの差
- 購入店舗や本の付録
- 登場人物への感情移入
- ストーリー構成の要約
- ストーリーの場所・時代への考え
- 結末への感動や違和感
- 批評・反論・学び
- 読書という行為そのものへの感想
- 良かったか・響かなかったか
- 疲れたか・楽しかったか
- 理解できたか・理解できなかったか
ある程度まで読書感想文を書けているのに、あと少し足りない…という時には別途、自分のことを語ったり、自分に当てはめたり、著者のことを深堀りしたりすると良いでしょう。それでも分からない、困る場合はコメントなどでご質問ください。
詰んだら「親・友達」を頼るべし
読書感想文でも、何でもそうですが、他者の表現や書き方を見て、模倣し、学ぶというのはとても価値ある行為です。チートやカンニング・丸っとコピーはダメですが、途中まで書いて、もうだめだぁってなったら、少し親や友達の使う言葉や表現に触れると良い。
必ずしも、自分ですべて表現しないといけないわけではなく、大人としては読書感想文を書こうとして選んだ行動や言葉による成長があれば、それでいいと思う。
例えば「この読書感想文は、私一人では書けなかったので、親にも手伝ってもらってみんなで書いた。みんなの感想や考えがつまった貴重なものである。」とも言えるわけです。他者に頼る過程で起こる、あなただけの物語にもおそらく価値がある。何かのきっかけになればそれでいいと思うよ。