大人が寡黙になる理由【他人をむやみに蔑んではいけない大人の事情】
大人は男女ともに、経験を積み、権限が大きくなるほど寡黙になります。議論が起こる内容への言及を避けつつ、自身の信条や価値観を隠す場合もあります。権限の強い人物ほど、むやみやたらに喋らない、寡黙になる理由を少し解説します。
結論
自分とその周囲を守るために寡黙になるケースがほとんどで
- 敵対者の特定のため
- 関連事業を否定しないため
- クライアントの信条を批判しないため
- 弱点を見せないため
- 情報を抜かれないため
- 言葉に重みを持たせるため
- 敵を作らないため
- 口を出す=責任を持つ
- めんどくさいから
など、ちょっとした発言が自身やグループの弱みになる場合があるので、特に不特定多数が集まる場所、たとえ大勢の社員の中でも余計な発言を避けるようになります。※社員の中に、ライバル企業の親戚出身の者がいるかもしれず、会社ではそこまで素性を調査できないため。
取引先・関連事業を失わないため
例えば、ちょっとしたニュースなどを見て、特定のテナントに入っている中小企業の社長が
毎月20万円しか正社員で稼いでいないなんてあり得ないだろ。俺なんて毎月100万円稼いでるぞ。それしか稼げないやつが有能なはずがない。
なんて発言をしたとします。それに対して、毎月20万円でサービスを提供している
- 発電所職員
- インフラセキュリティ
- 翻訳職
- 事務作業員
- 水道局員
- ガス関連社員
- 郵便配達員
- 不動産常設管理人
などがそれを聞いていたとします。多くのインフラ関係者は、黙してその発言をした人と会社名を覚えております。この中小企業にテナントを貸していて、かつ、複数の不動産を所有しているオーナー(最重要人物)が、テナントの継続審査のために、親交がある上記の業種の人々と飲み会などで話をさりげなく耳にしたとします。
すると
あの階に入ってる会社は、うちの身内すらも無能だって言ってるわけか…。そうか…。
と判断し、あまりよい印象を受け取らない上に、契約を継続しない決定権限を持つので、黙って時を待ちます。それと同時に、その会社よりもまともで、連携力のある会社の人とも「仕事上の付き合い」で「良いテナントがあったら入りたい」なんて話を聞いている事は多いです。
その後、訪れた審査の結果、他者をバカにした中小企業は継続却下。退去を命じられます。そうなってもその中小企業の社長は理解できずに
売上も伸びている私たちの会社がなぜ審査に通過できなかったんだ。あそこの不動産周りもみんな無能なんだ。再審査を要求してやる。
なんて発言をしちゃったとします。仮定せずともよくある話です。そこではじめてオーナーと対面する機会が訪れます。こうした決定にはオーナーまで出てくることは殆どないため、中小企業の社長では、裏の動きを知ることはできません。
面会時には
私は、~~で120ほどの不動産を所有しているオーナーで、あなたの会社が入っていたテナントのオーナーでもあります。そのテナントのセキュリティ・警備やメンテナンスは、うちの関係者が毎月20万円ちょっとの金額でがんばってやってくれていたのですが、どこの誰かは存じ上げないが、どうやら毎月20万円しか稼いでない人は無能だという考えの人がいるらしいんです。うちの貸与契約・コンプライアンスではある程度理念も大切にしているので、それに反するような人をテナントに入れたままにするのは、他のテナント入居企業にも示しがつかない上に、理念を同じにする会社が入りたいと非常に熱心なアピールとこちらに有利な賃料を提案してくださいまして、残念ながら、あなたの会社には退去して頂くことになりました。
というような話がなされて、この退去せざるを得なくなった会社はその場で継続のお願いをすることも実質、次の入居希望者が決まっている手前不可能で、ましてや、その会社のライバルにあたる会社が入居を許されているなんてこともザラにあります。さらに、そのオーナーの人脈とオーナー自身の不動産への入居審査が厳しくなったことで、まともに入居できそうなテナントも大幅に減り、事業所を都道府県外に移転…、さらには、セキュリティ業務の外注依頼などもお願いしても受けてもらいにくくなり、よりコストの掛かる他のセキュリティ企業に依頼しなければいけなくなり…。
というようなことが割と簡単に起こります。大なり小なり、大人の嫌がらせで、かつ、角が立たない、相手が100%悪く、こちらは他の企業ブランドを守る必要があると大量の盾を持って、相手を撤退させられ、再起不可能に近い状態に追い込めるケースも多いです。
こういう事態が会社の中の部署でも、大企業でも、国家間でも起こることがあり「きっと多くの人が同じ考えをしているだろう」から、少しセンシティブでも発言してしまおうなんて軽率かつ世間知らずな発言をしていると、ものすごく痛い目に遭います。厳しい状況に追い込まれていても、個人でYouTubeで話しているようなスタイルやSNSを駆使して議論をするようなやり方をしていると、なかなか現実世界での変化には気づかないため、そこの関連事業から反感を買っているか分からず、とんでもない所で詰む、なんてことが起こります。
まともな大人は、たとえ、ネット上でもリアルでも、誰かに質問されてもされていなくても、滅多な発言はしないものです。権限がなく、周りに守るものもなく、後先あまり考えていない目立ちたがり屋な性質がある人は気にせず発言しているでしょうし、よくセンシティブな発言をして炎上しているので、反面教師として学んでいる方も多いはずです。
だから、余計なことを口にしないために、寡黙になります。これが一番平和だからです。
説得力を上げるため
自称演説家、講演家として、なんでもかんでもよく喋る人も世の中にはいます。そういう者ほど、情報を取り込みやすいのでとりあえず聞きますが、接触回数の心理と慣れにより、だんだんと言葉の重みは軽くなります。
目立てば目立つほど、ライバル企業にとっては、そのスピーカーをコンプライアンスで叩けるチャンスが一方的に増え、有限の知識と経験の中でスピーカーがネタを出し尽くせばチャンスはライバルにどんどん流れていきます。
なんでもよくしゃべる人が放つ「そんな人の話聞かなくていいですよねぇ!」という言葉と
普段ほぼ言葉を発さない重鎮が放つ「君は、どうしたいんだい?」という言葉では
その言葉の持つ重さと意味合いが異なります。
この反応が出てくる質問は「~~だったのですが、どう思うでしょうか?」系の話でしょう。これに対しての回答の中身は次のようになります。
- 質問者の求める回答になっていない。
- 他の可能性をも持つ「その人」との断絶を提案している。
- 「そんな人」と同じ考えの人が、よくしゃべる人の、家族や上司・取引先にいるかもしれない。
よくしゃべる人は、自分が喋れれば、そして、質問者が自分の話を聞いてくれればいいので、言い放って終わりです。あまり中身はなく、質問者の成長も少なく、有意義とは言えません。
- 質問者は「~~だった」の内容に否定的であるのは自明。
- 質問者の意見を尊重して行動をどうするかにシフトさせる。
- 聞き役に徹して、相手からの情報提供を増やす。
- 私はあなたの意思決定の道具じゃないので、まずは自分で考えなさい、の意。
- 自身は何も否定せず、質問者が既に持つ答えを引き出す。
- 明らかに違う場合は、別視点を提案する。
上記で重鎮の発する言葉として上げたこの発言には、これだけの意味が含まれていて、さらに他の論点にも持っていきやすくなります。相手は自身で考える過程を経験して成長し、自身は誰も敵に回さずに、一定の答えを導き出し、聞き役に徹することで質問者からの信頼も得られるという結果になります。質問者にも、議題にもなかった視点を追加してあげれば、自身の評価をさらに上げることもできます。
他人の質問がないとろくに喋れない人や、ただべらべら喋るばかりの人が薄っぺらで、敵を作りやすいのは当然の帰結です。
返答は一番ラクなおしゃべり
何かの物事に対して否定or肯定だけを返せばよいのは、非常に簡単です。YouTubeなどで質問を受けてからしか喋らないのは、自分から意見や疑問を持って解決方法を模索、研究せず、ただ「否定or肯定」で返せば、まるで考えていたかのように視聴者を勘違いさせられて、スピーカーも自己満足できるまでのコストが最小で済むだけです。
大切な行動原理
自身で課題を見つけて、意見と持って研究し、改善し、反論も受けて意見を変えていき、一定の帰結に至って行動に移す、というのが最も大切で、価値があります。そこに至るまでには、べらべら喋って時間をムダにするわけにはいかず、多くの人の話を聞かないといけないので、自分ばかりがしゃべる事はあまりないです。
学ばせて頂く立場で物事が進むことが多いため、偉そうに、傲慢に、自身の考えを述べているだけで具体的に何もしてないなんて状態を他者に見せるのは、非常にリスキーです。いざ、助けが必要になった時に、誰も威張り散らしていたスピーカーを助けません。そうなった時には、何も考えずにスピーカーの音だけを聞く視聴者が残っているだけで、まともな人や力がある人は既に離れている時です。
下手に敵を作らない、余計な事は言わない、発言する時は目的達成した後、など、誰のどんな部分を学ぶか、よく見極めましょう。
終わりに
なんでも話せる友達や身内がいたら、年齢・性別・身分・国籍関係なく、大切にしましょう。利害関係や大人の事情を一切気にしない、不安な関与がない話し相手はなかなかいないものです。