フライドポテトは本当に危ないの?アクリルアミドの危険性・安全性調査【学術論文】

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フライドポテトやポテトチップスに含まれているアクリルアミドが危ないから、マクドナルドのフライドポテトは食べてはいけないという論調を見かけましたが、科学的根拠を記載している記事がほぼなかったので、学術論文や最新の研究を調べてまとめておきました。虚偽の流布は犯罪となりますので、思い込みで発言せず、根拠に基づいて発言しましょう。

 

アクリルアミドとは

アクリルアミド(acrylamide)は、IUPAC名:2-propenamide、化学式C3H5NO、示性式CH2=CHCONH2、分子量71.08、融点84.5度、沸点241度で、御存知の通り、経口摂取で発がん性、受胎能力の低下、皮膚アレルギーの可能性があり、目には刺激性があります。

 

引火点138度、発火温度424度、比重1.122(30度)、密度1.13g/cm3水への溶解度204g/100mL(25度)と非常に水によく溶ける上に、生分解性があり、好気条件でも、嫌気条件でも分解されやすい物質です。

 

加熱前にじゃがいもを水につけておいても、その時点ではアクリルアミドは生成されていないため、アクリルアミドは除去できませんが、加熱調理、揚げ調理後に水に浸したり、水につけたりしておけばアクリルアミドは水の方に溶けて逃げていきますが、おいしくなくなります。

 

またアクリルアミドの慢性摂取で、腎臓がんのリスクが高まる(高まるだけで即座にガンにはならない)ことも事実と把握していて良いでしょう。

Dietary acrylamide intake and the risk of renal cell, bladder, and prostate cancer

出典:http://www.ajcn.org/cgi/content/abstract/87/5/1428


 

食品安全委員会の記載では以下のように記されています。

アクリルアミドは、広範な組織に分布するが蓄積はしないとされている。アクリルアミドは反応性の高い代謝物であるグリシドアミドへ代謝される経路と、グルタチオン抱合される経路の 2 つが存在し、いずれの代謝物も、更に代謝され、尿中に排泄されると考えられている。また、アクリルアミド及びグリシドアミドは、いずれもヘモグロビン又は DNA と付加体を形成する。
げっ歯類を用いた試験において、発がん性以外の毒性については、神経毒性、雄の生殖毒性等の影響がみられている。

発がん性については、マウスではハーダー腺、乳腺、肺、前胃等で、またラットでは乳腺、甲状腺、精巣等で発がん頻度の有意な増加がみられている。遺伝毒性については、in vitro 試験及び in vivo 試験の多くの試験で陽性であった。したがって、アクリルアミドは遺伝毒性を有する発がん物質であると判断した。

ヒトにおいて、ばく露量とがんの発生率との関連に一貫した傾向はみられていない。職業性ばく露で神経への影響がみられているが、経口摂取量との関係は不明である。一般住民を対象とした疫学研究及び職業性ばく露に関する研究の結果をアクリルアミドの定量評価に用いることは困難であると判断した日本人における食品からのアクリルアミド摂取量は、モンテカルロシミュレーションにより、中央値は 0.154 μg/kg 体重/日、95 パーセンタイル値は 0.261 μg/kg 体重/日と推定された。また、点推定により、0.158 μg/kg 体重/日と推定された。さらに、2015 年 11 月に公表された農林水産省の高温調理した野菜の新たなデータも加え、点推定を行った結果、0.240 μg/kg 体重/日であった。

重要だと思われるのは

  • 発がん性
  • 神経毒性
  • 生殖毒性
  • 日本人アクリルアミド摂取量0.240 μg/kg 体重/日

1日の体重60kgの人のアクリルアミド摂取量は14.4μg前後だろうと予測されます。

 

母乳からも検出されている

ヒトでは母乳からもアクリルアミドが検出されており、自家製ポテトチップス(アクリルアミド含有量1,000 µg)を摂取した母親(33歳)及び市販のポテトチップス(アクリルアミド含有量800 µg)を摂取した母親(24歳)において、4時間後にそれぞれ18.8及び4.86 ng/mlのアクリルアミドが検出された(Sörgel et al.2002)。

食品安全委員会2016「加熱時に生じるアクリルアミド」24ページ

PDFはこちらから

極微量ではありますが、アクリルアミドは自身で作ったポテトチップスでも、市販のものでも同じように吸収してしまう上に、母乳からも検出されてしまうとのことです。

 

幼い子どもがいる方や母乳育児中、妊娠中の方はポテトチップスやフライドポテト、かりんとうは食べないようにしましょう。イモ類の高温調理したものは油であげていなくてもアクリルアミドが出るので、焼き芋、芋入りのみそしる、ポテトサラダなども避けておいた方が良いでしょう。

 

食品中のアクリルアミド計測値(厚生労働省)

厚生労働省が発表している以下テーブル表・出典データによると次のような食品でアクリルアミドが多く検出されています。

  • ポテトチップス(じゃがいも)
  • かりんとう(小麦)
  • コーンスナック(とうもろこし)

もちろんマクドナルドのフライドポテトもアクリルアミドは理論上多いと考えられますが、このデータを見る限りでは、ポテトチップスやかりんとうでもアクリルアミドは結構量があります。マクドナルドのポテトだけが一概に危険だとは言えなくなりました。カルビーや湖池屋のポテトチップスも、かりんとうもアクリルアミドを多く含んでいる可能性が高い食品です。

 

食品原材料検出値(ng/g)
ポテトチップス馬鈴薯3544
ポテトスナック馬鈴薯57
マッシュポテト馬鈴薯nd
ボーロ馬鈴薯tr
さつまいもスナックさつまいも112
芋ケンピさつまいも336
コーンスナックとうもろこし535
シリアルとうもろこし122
プレッツェル小麦56
ビスケット,クッキー小麦302
クラッカー小麦302
かりんとう小麦1895
ドーナツ小麦tr
カステラ,バームクーヘン小麦nd
麦こがし大麦236
せんべいtr
揚げもちもち米36
豆スナックさやえんどう101
豆スナック小麦,枝豆83
きな粉大豆118
いりごまごま197
落花生落花生92
フライビーンズ空豆120
アーモンドアーモンド324
ピスタチオピスタチオ34
カシューナッツカシューナッツtr
ウォールナッツくるみnd
りんごチップスりんごnd
バナナチップスバナナ65
野菜チップいんげん45
野菜チップカボチャ55
野菜チップにんじんtr
野菜チップ馬鈴薯tr
パン粉小麦35
即席麺小麦163
フライドオニオンたまねぎ428
いため玉ねぎたまねぎ122
カレールー香辛料116
カレー粉香辛料423
緑茶tr
ほうじ茶567
紅茶tr
中国茶142
中国茶(プーアール茶)nd
麦茶大麦270
コーヒーコーヒー豆231
ココアカカオ豆141
脱脂粉乳牛乳tr
非保存食品1
フレンチフライ馬鈴薯784
大学いもさつまいも34
パン小麦tr
ゆでそばそばnd
ゆでうどん小麦nd
ごはんnd
とうふ大豆nd
豆腐製品大豆nd
たまごやきたまごtr
オムレツたまごnd
春巻き小麦tr
春巻き(皮)小麦30
メンチカツ小麦,肉tr
唐揚げ鶏肉,小麦36
焼き魚nd
天ぷら(ころも)小麦tr
フライ(ころも)小麦53
魚フライ鰺,小麦nd
焼き竹輪魚肉nd
さつま揚げ魚肉nd

出典:https://www.mhlw.go.jp/topics/2002/11/tp1101-1a.html

 

「加熱時に生じるアクリルアミド」に関するPDFがあったので、こちらPDFをバックアップしておきましたので、見たい方は見てください。

食品安全委員会2016「加熱時に生じるアクリルアミド」

PDFはこちらから

農林水産省は 2015 年、低減の取組状況を確認するために行った調査の結果を報告している。ポテトスナックのアクリルアミド濃度の平均値は、2006、2007 年では 1.1 mg/kg であり、2015 年では 0.57 mg/kg であった。フライドポテトのアクリルアミド濃度の平均値は、2007 年では 0.41 mg/kg であり、2015 年では 0.27mg/kg であった(農林水産省 2015d)。

アクリルアミド低減のために今でも十分な努力と研究が重ねられていることも事実として引用し、記載しておきます。

 

アクリルアミドの急性毒性・LD50(重要)

ここではマウスとラットとうさぎのLD50を記載しておきます。

マウス:107mg/kg

Hashimoto et al. 1981

ラット:150~203mg/kg

McCollister et al. 1964、Fullerton and Barnes1966、Tilson and Cabe 1979

ウサギ:150~180mg/kg

McCollisteret al. 1964

※食品安全委員会2016「加熱時に生じるアクリルアミド」37ページ|PDFはこちらから


これを見る限りでは、人で数値をそのまま当てはめた場合で考え、マウスのLD50を参考に計算してみると次のようになります。

体重60kgのLD50は、6420mg=6.42g/60kg

ということになります。

 

2015年のフライドポテトからのアクリルアミド検出量を60kg(ポテトの重さ)に換算すると以下のようになります。

  • 0.27mg/kg
  • 16.2mg/60kg

この数値を見てみると、フライドポテトを60kg食べてもアクリルアミドは16.2mgしか食べられないということです。判断するのは軽率ですが、マウスのLD50を超える量のアクリルアミドを摂取するには2015年の計測時のフライドポテトを

  • 体重60kgの人のLD50:6420mg
  • ポテトに含まれる平均アクリルアミド:0.27mg/kg
  • 6420 ÷ 0.27 =23,778

23,778kg摂取しないといけない計算になります。(…計算あってる?ほんとに?)23,778kgは約24tです。

 

なぜポテトからアクリルアミドが出るのか

アミノ酸のひとつ「アスパラギン酸(Aspartic acid)」が多い食品は加熱調理することでアクリルアミドが生成されます。これはポテトに限ったことではありません。

 

2002年にスウェーデンでの研究から世界に広まったようで、アスパラギン酸と一緒に含まれている糖類のメイラード反応(褐変反応)でアクリルアミドが生成されてしまうということです。

 

褐変反応、メイラード反応は未だにその現象がよく分かっていないもので、りんごが茶色くなる、ももが茶色くなるなどの現象もメイラード反応ですが、果物系のメイラード反応ではアクリルアミドは生成しないでしょう。

 

アクリルアミドを減らす工夫

Several potato cultivars were used in this research, including Innovator (I), NDTX 4930–5W (N), ATX 854 04–8W (ATw), Atlantic (A), Shepody (S), ATX847806–2Ru (ATr), and White‐Rose (W). An electric bench‐top (atmospheric conditions)‐type fryer was used to fry the potatoes. Three temperatures were used: 150 °C, 165 °C, and 180 °C. The vacuum frying experiments were performed at 118 °C, 125 °C, and 140 °C and a vacuum pressure of 10 Torr. The potatoes were sliced (1.5‐mm thick) and fried for different lengths of times. For potatoes fried at 165 °C (for 4 min) at atmospheric conditions, the acrylamide contents were 5021 ± 55 ppb (W), 552 ± 25 ppb (I), 358 ± 50 ppb (N), 397 ± 25 ppb (ATw), 646 ± 55 ppb (A), 466 ± 15 ppb(S), and 537 ± 14 ppb (ATr). Vacuum frying reduced acrylamide formation by 94%. Results showed that both cultivar and modified frying systems can play an important role in reducing acrylamide formation in fried potatoes.

引用元:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1365-2621.2004.tb09903.x

この研究では、

  • Innovator (I)
  • NDTX 4930–5W (N)
  • ATX 854 04–8W (ATw)
  • Atlantic (A)
  • Shepody (S)
  • ATX847806–2Ru (ATr)
  • White‐Rose (W)

という調理器具を使用して実験された。ジャガイモを揚げるために電気ベンチトップ(大気条件)タイプのフライヤーを使用。150°C、165°C、180°Cの3つの温度で通常のフライ、真空揚げ実験は、118°C、125°C、140°Cで、10 Torrの真空圧でフライ実験。ジャガイモをスライスし(厚さ1.5 mm)、さまざまな時間で揚げた。大気条件で165°C(4分間)で揚げたジャガイモの場合、アクリルアミドの含有量は5021±55 ppb(W)、552±25 ppb(I)、358±50 ppb(N)、397±25 ppb(ATw )、646±55 ppb(A)、466±15 ppb(S)、および537±14 ppb(ATr)。真空で揚げると、アクリルアミドの形成が94%減少しました。結果は、改良されたフライシステムの両方が、フライドポテトのアクリルアミド形成を低減する上で重要な役割を果たす。


この記載から、真空に近い状態での揚げ調理をしていればアクリルアミドは低減されることが分かっています。

 

出典

Color changes and acrylamide formation in fried potato slices

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0963996904001620

Reduction of Acrylamide Formation in Potato Chips by Low‐temperature Vacuum Frying

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1365-2621.2004.tb09903.x

 

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