ヒアリの毒:ソレノプシンの化学的成分詳細と刺された時の対処法【学術論文】

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日本にもついに伝播したことが分かったヒアリは2017年に一気にその知名度を高めましたが、2018年、2019年になってからもその脅威はなくなっていません。今後ヒアリに刺されてしまう日も来るとリスクマネジメントするために、今回はヒアリの毒の成分を化学的に分析し、対処法を学術論文を元にまとめました。調査をしたのは山梨大学工学部生命工学科を卒業し、生命工学、生化学、発酵生産、食品衛生、高分子化学、無機&有機化学を学んだ私自身です。

 




 

ヒアリとは何者?【まずは敵を知る】

ヒアリ(学名:Solenopsis invicta)は南アメリカ原産、世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれている悪名高いほどの強い生命力のあるアリです。近年日本の貿易港などでも存在が把握されている特定外来生物として危険視されています。ヒアリの英語名はRed imported fire ant、別名Fire Antと呼ばれています。

 

ヒアリに刺されると、ヒアリが持つアルカロイド系の毒素により、痛みとかゆみを伴う水泡ができて、時間が経つと落ち着いてきます。患部に熱さを感じるという人もおり、人によって感じ方には個人差があります。

 

即死級の毒ではないですが、アナフィラキシーショックが起こる可能性があることがわかっているため、安易に刺されないようにする必要があります。アシナガバチなどと同じで2度めに刺されるのは特に注意しないといけません。

 

日本においては2017年の夏頃に愛知県、茨城県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県の6都府県でヒアリの存在が発見されており、ギリギリ水際で侵入対策されたと言われています。ヒアリ単体では増殖が難しく、当然ヒアリの女王アリが侵入して増殖すると大きな危険を招きます。今のところ、ヒアリの女王アリが侵入してコロニーを形成したという報告はありません。

 

 

参考:http://gairaisyu.tokyo/species/danger_15.html

参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%A2%E3%83%AA

参考:http://www.sankei.com/affairs/news/170716/afr1707160017-n1.html

参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Red_imported_fire_ant#/media/File:Solenopsis_invicta_-_fire_ant_worker.jpg

参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Red_imported_fire_ant#/media/File:RIFA_Raft_After_Heavy_Rain.jpg

 

 

毒の詳細と特徴

ヒアリの毒は「ソレノプシン(2-メチル-6-アルキルピペリディン):Solenopsine A」と呼ばれるものです。この物質が公に公表されたのは2010年7月1日と記載されており、ごく最近になってようやく毒素が分析されたものです。そのため、まだ特効薬などは期待できず刺されないようにするのが一番です。

 

分子式:C17H35N

物質量:253.277

分子量:253.4665

CAS:137038-57-4

 

この毒素は、細胞膜表面タンパク質の機能阻害を引き起こします。ナトリウムイオンやカリウムイオンの輸送がうまくいかなくなり、代謝が落ちたり、細胞の働きがほとんどできなくなったりしてしまいます。

 

さらに、アセチルコリン伝達阻害も引き起こします。運動神経や副交感神経の働きを阻害するということで、思い通りに身体を動かせなくなったり、呼吸器などの働きがうまくいかなくなったりするため、こうした症状が命の危険を招きます。身体の小さな子どもが一度に大量にヒアリに刺されるなどするとこの危険が高まります。

 

アメリカではこのヒアリに年間1400万人以上が刺されていると言われています。刺されても実際に亡くなっている方は100人から120人ほどといわれており、死亡率はそこまで高くはないように思えますが、死に至る可能性があるということで決して甘く見て良いものではありません。

 

 

参考:http://chianti.ucsd.edu/~rsaito/ENTRY1/WEB_RS3/PDF/JPN/Texts/biobasic3-2-7.pdf

参考:https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/substance/96023306

参考:http://www.ebi.ac.uk/chebi/searchId.do?chebiId=CHEBI:80722

参考:http://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?cpd_ja:C16782

参考:https://www.weblio.jp/content/%E3%82%BD%E3%83%AC%E3%83%8E%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%B3%EF%BC%A1

参考:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022283611011338?via%3Dihub

 

 

刺された場合の対処

ヒアリに刺されてしまった場合、急いで処置をする必要はまだありません。アナフィラキシーショックがないことを確かめながら、冷静に医療機関に行って治療してもらいましょう。アナフィラキシーショックが出ている場合はすぐに救急車を呼んで下さい。

 

軽度症状

刺されてすぐに熱さを感じて、痛み、かゆみと症状の感じ方が変わります。アナフィラキシーショックがなければ10時間ほどして膿が出てきます。

 

中度症状

刺されて数分で刺された場所が大きく腫れ上がります。その後、全身に蕁麻疹(じんましん)症状が現れ、人によっては冷や汗をかきます。相当危険な状態です。

 

重度症状

刺されて数分で、いわゆるアナフィラキシーショック症状が出てきます。呼吸困難、意識障害、血圧低下などの症状が出ます。めまいや冷や汗から始まり、薄っすらと吐き気、視野が灰色になるなど少しずつ悪化していくように感じて、寒気を感じるようならば血圧が低下していますのですぐに救急車です。

 

 

参考:https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/files/r_fireant.pdf

 

 

駆除方法と被害予防

一般的な昆虫の駆除方法で簡単に殺虫できます。ただし、大群でいる場合には攻撃者に対して攻撃を仕掛けてくる可能性があるため、素人は近づかないようにしましょう。物理最強です。

 

  1. 殺虫剤をかける
  2. 熱湯をかける
  3. 洗剤をかける
  4. 物理攻撃(石で潰すなど)
  5. 瞬間冷却する

 

どんな虫にでも基本的に効果があると考えられている対処法です。殺虫剤が一番安全ですが、道具があまりなくて、相手が一匹ならば物理攻撃が最強です。被害予防としては安易にヒアリらしきものを見つけても触らないようにすることです。特に赤色の虫は触らないと覚えておきましょう。

 

自然界において、赤色や黄色は警戒色として「俺には毒があるぜ」ってのをアピールしているのと同じなのです。赤色の小さい虫ほど危険だと思っておいて損はないので、お子様には特に赤い虫は危険だ!と教えておいてください。