【焙煎】おいしいコーヒーの焙煎方法
当方は趣味の延長としてコーヒーの自家焙煎をしています。コーヒーコーディネーターとしても活躍しており、多品種のブレンド、焙煎具合ごとのブレンド、カフェインレスブレンドなども可能です。コーヒーに関しては焙煎士としてもお仕事をいただいています。
苦いだけがコーヒーじゃない
カフェやスタバで飲むコーヒーは基本的に苦みが引き立っています。コーヒーのアミノ酸成分やクロロゲン酸、テオフィリン、テオブロミンなどを意識して焙煎していないのではっきり言ってただのコーヒーです。豆の特徴を一つ一つ把握するのは非常に難しいですが、官能試験士の舌と焙煎士の経験と研究の時間があれば最高の焙煎豆を生み出すことができます。苦みにも甘みを加え、ライトロースト並みの香りを出すこともできます。
大量生産豆は調整できないから苦いだけ
焙煎は焙煎士の好みが強く影響するので、基本的にコーヒー好きが焙煎すると苦くなるだけです。私が焙煎するときにはそれぞれの豆から最もおいしさ・甘さ・アロマの香り・揮発性・苦みがバランスよく出るように1ロットに対して何度も研究するので、1kgの豆があっても、他人に出して飲んでもらえる状態にできるのは800g程度です。
同じ豆でも焙煎具合を3通り以上用意してその豆が最も良い味を出せるポイントを見つけます。世間一般でいわれている最適な焙煎具合はその豆の育った環境や時期のずれ、焙煎する時の気温と湿度など非常にシビアな要因で変化します。
大量生産品では一度に3kgや10kg焙煎しないといけないのでどうしても焙煎にムラができてしまいます。大きな焙煎機になるほど味の管理は難しくなるので、少量焙煎の味には絶対にかなわないのです。
どんな方法で入れてもおいしいコーヒーを作れる
その豆が持つ複数の性質をバランスよく引き出してあげれば、どんな方法で抽出してもその豆の良さを感じることができます。私のようにプロの焙煎士ならば、やかんとペーパーフィルターで入れた時の味、コーヒーメーカーで入れたときの味、サイフォンで入れたときの味の変化も考えながら、どの入れ方でもおいしくなるように味を整えられます。
3種類の豆をそれぞれ3つのロースト具合にしてブレンドしたコーヒー粉はすべてが苦みを出しやすい粉ではなく、酸味や甘みを出しやすい粉でもあり、香りを引き立てやすい粉も含まれます。抽出時間を長くしてしまっても苦みが出せる量の上限が最もおいしく感じられる量までしか出ず、香りも甘みも同様にベストな状態までしか抽出できないように管理しています。
研究が足りない焙煎士ほど「そんな細かい調整はできない」と言い訳します。コロンビアとブラジルで味と香りの違いしか説明できない焙煎士が特にその部類です。どんな化学成分に違いがあり、農園の生産方法からどれほど水分を含んでいるか確かめ、どんな環境で輸送されて日本に来ているかを調べたうえで焙煎しないと、その豆の一番おいしい所を引き出すことはできません。
まずは手網焙煎から学ぶべし
最も少ない量を焙煎できるのがガスコンロでもできる手網焙煎です。家庭でもできますが、ガスの火で焼くより、炭火で焼くほうが味が良くなります。ただし、ガスコンロの火で焙煎したからと言ってガス臭くなるということはありません。炭火で焼いたからと言って香りが良くなるわけでもありません。炭火はじっくりと過熱していくからそれだけ熟成させながら焙煎ができるだけです。
一度に30gから100gの焙煎しかできない分、豆の焙煎具合も細かく調整できます。ロースト具合もかなりシビアに決められ、量が少ない分焙煎もすぐに終わります。水分も飛ばしやすいので、初めて焙煎するという方はまずは手網で焙煎してコーヒーの豆の良さを引き出せるように工夫しましょう。苦みを出さないように焙煎するには時間をかけてじわじわ焼く必要があるのでかなり気長に焙煎しないといけませんが、それだけおいしいコーヒーを入れられるようになります。