エステル型ジアルキルアンモニウム塩の性質と安全性評価【柔軟剤の界面活性剤】
エステル型ジアルキルアンモニウム塩(エステルアミド型ジアルキルアミン塩|Ester-amide type dialkyl amine salt)は第四級アンモニウム塩の一種で、市販の柔軟剤によく使用されているもの。静電気が発生しにくく、肌への刺激も若干強めで、アミド型ジアルキルアンモニウム塩やジアルキルイミダゾリニウム塩などを含む柔軟剤を使用することを検討するのも重要です。
前提
花王のSafety Summaryでは「エステルアミド型ジアルキルアミン塩」の名称で記載があり、エステル型、アミド型両方が記載されており名称に関して同じものかどうかは判断しにくいが界面活性剤としての安全性判断には役立つと思うので、これを参考にする。
アミンは、アンモニアのH原子を炭化水素基等で置換した化合物の総称で、アンモニウム塩とアミン塩はおおよそ似たようなものと考えられる。
エステルアミド型ジアルキルアミン塩の詳細な化学物質名は、N-3-オクタデカン(またはヘキサデカン若しくはテトラデカン)アミド] プロピル}-N-メチル-2-[オクタデカノイル(またはヘキサデカノイル 若しくはテトラデカノイル)オキシ]エチルアンモニウム=クロリドで、柔軟剤によく記載されている「エステル型ジアルキルアンモニウム塩」もこの化学物質であると考えられる。メーカーによって製法に差がある可能性が高いので、全く同じものではないことに注意してほしい。
エステルアミド型ジアルキルアミン塩の特徴・性質
エステルアミド型ジアルキルアミン塩の物理化学的特性は
- 分子量:673.5
- 融点:73.9~92.9℃
- 水溶解度:<0.002mg/L
とされています。水溶解度だけを見るとあまり水には溶けず、また融点も約74℃なため市販の柔軟剤の中では液体ではなく固体の状態で溶け込んでいるように見えていると考えられます。
エステルアミド型ジアルキルアミン塩の安全性・環境リスク
ヒトへの安全性については
- 急性毒性なし|経皮・経口
- 刺激性・腐食性なし(皮膚&眼)
- 皮膚感作性なし
- 遺伝毒性なし
- 発がん性なし
- 生殖毒性なし
- 生分解性あり
ヒトの体に対してはほとんど毒性を示すことはないですが、水生生物(魚類、水生無脊椎動物、藻類)に対しては強い毒性があることが分かっています。
市販の柔軟剤をそのまま川に流すことはないと思いますが、川や池などに廃棄すると水生生物に悪影響があります。洗濯排水は、下水に流されるため、下水処理場を経由して処理され、かつ、生分解性により危険が少ない状態になっていきます。
第四級アンモニウム塩の構造・化学式
第四級アンモニウム塩に分類されている「ジアルキルアンモニウム塩(ジアルキルアンモニウムクロライド)」の構造は上の画像のようなものでさまざまな型があります。エステル型はRの部分の結合がエステル結合(R-CO-O-R’)、アミド型はRの部分の結合がアミド結合(R-NHCO-R’)となっています。
乳幼児がいる場合は使用中止の決断も
大人にとって害がなくとも、赤ちゃんや乳幼児にとっては柔軟剤の衣服への残留物や香りがダメでNGなことがあります。生分解性があるとはいえ、即時分解されるわけではなく、赤ちゃんの場合は香り付きの洗剤や柔軟剤のせいで肌荒れを起こすこともあります。
肌荒れは大人はかゆい程度で済みますが、ずっと寝ている赤ちゃんにとっては肌のかゆみや違和感の原因となり、やたら泣いてしまったり、肌にガサガサができたりする可能性があるため、赤ちゃんが大きくなるまでは柔軟剤の使用をいったん中止する決断も重要です。
赤ちゃん用と大人用の衣服で洗濯を分けても効果がない場合があります。洗濯槽内の残留物や汚れなどが問題になることもあります。どれだけ香りが良くても、赤ちゃんや乳幼児にとっても良いものかどうかは判断できませんので注意しましょう。
出典・参考
花王優先評価物質の安全性要約書
https://chemical.kao.com/jp/sustainability/saicm/article_05/
第4級アンモニウム塩|ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ
https://www.lion-specialty-chem.co.jp/ja/structures/cationic/01.php
エステル4級塩のヒト健康影響と環境影響に関するリスク評価結果について