パイナップルをまるごと一個カットする方法【追熟の原理とメカニズム】
パイナップルは小分けのものを購入するよりもまるごと一個購入して自分でカットするほうが断然お得です。パイナップル一個を小分けにすればお店で売っている金額に換算すると3000円分くらいになります。私はいつもまるごとカットしているので、慣れてきたカットの様子をまとめてみました。
パイナップルのネバネバは熟してるだけ
まずはじめに、パイナップルをカットすると手のひらにくっつくネバネバした感覚。あれは、腐っているわけではありません。パイナップルの針状の結晶、縦長の分子構造があるためにちょっと糸をひくようなネバネバするような感じになるんだ。あと、パイナップルに含まれている酵素の影響。お店で買ってきて1日から3日以内にカットしたパイナップルがネバネバしててもそれは腐敗ではない。
パイナップルが腐敗するとデロンデロンになって、スライムみたいな液状になってしまいます。そうなっていないうちは腐敗じゃないので大丈夫。もちろん、1週間も2週間も室温放置した場合は無理にだべないでね。自己責任。
パイナップルカット、早速一気にいってみよー!
まずは皮を剥く作業
まずはカット前のパイナップル!生活感のあるキッチンなのは気にするな。
いい感じの熟し方をしているパイナップルをゲットできたので、日光浴させて実を柔らかくさせました。
まずはパイナップルの葉っぱのところを素手でねじって採っちゃいます。ここ、葉っぱを落とさずにカットしたら人参みたいに葉っぱから新しいパイナップルが育つらしい。
購入後すぐに自宅でカットする!というかたは葉っぱの部分は袋詰する所でちぎっちゃって、お店に葉っぱだけ捨ててきちゃてもいいかも。
まずはパイナップルの頭とお尻をカットして輪切りみたいにします。
ぱっかーんって、豪快に切りましょう。結構ガッツリ切って大丈夫。こちら側もカットします。包丁の切れ味が悪いと刃が入らないので、しっかり100円ショップの砥石などで研磨しておいてね。
ザクッと、落としちゃってください。基本的に頭側が明るい黄色で、お尻側はオレンジ色してます。
あとは、縦において側面を剃り落とすように、ケバブみたいに削ってください。
削ぎ落とし、種取り作業
削ったらだいたいこんな感じのが残ります。種の部分とか、ちょっと悪くなってる部分も見えてきます。こういう部分はカットしちゃいましょう。
日本ではあまりこういうカットはされないみたいですが、タイとか、シンガポールではこんな感じでカットしてました。
両方から、種の部分を挟むようにして溝を作って、切り取ります。カットした後も食感を失わずに済み、欠損、ムダも最小限にできます。見た目もおしゃれになるよ。
これを地道にやっていきます。慣れてしまえばそんなに難しくはありません。結構すぐできます。指を切らないように気をつけてね。
カット途中はこんな感じ。まだ種が残っていたりするので、細かいところもとっちゃいましょう。気にならないなら、多少は残っていても、食べてしまっても健康上問題はないです。
ひとまずカット完了!横から見るとこんな感じで、まだまだ雑ですがちょっときれいでしょ?
上から見るとこんな感じ。フルーティな香りに包まれるキッチン。食べるのが楽しみです。海外ではこのまま豪快に図太いスティック棒にしてかじったりするそうです。
次は縦においたまま、芯を残して行くように円周部分をカットします。これまたざっくりとカットしちゃいましょう。
細かくカットする作業
第一刃目。ガッツリカットします。この調子で、芯の部分は外して、ガツガツ切ります。
カットしたらこんな感じになります。あとは、食べやすいようにゴロゴロカットして完了です。
ゴロゴロサイズにカットしたのが、この状態です。パイナップル1個でこれくらいの量が切り取れます。パイナップル1個400円。
小分けのパイナップルだと、8切れくらいで100円くらいで売ってるので、2000円分くらいはここに入っていることになります。
これでパイナップルカットの儀式は完了です。あとはフォークでちまちまつついて食べるだけです。400円で2000円分のパイナップルを食べることができます。すごいね。
忘れちゃいけないのは、芯の近くに残された、一番美味しい実の部分。ここは自分でカットしている人でないと味わえないので、すぐに捨てずに削ぎ落として食べてね。硬い芯を切らなければシャクシャクのパイナップルを食べれます。完熟です。
カットして出た生ゴミは庭の土の肥料にしましょう。まるごと一個買ってきてるのでプラスチックのゴミは出ないし、肥料にはなるし、美味しくたくさん食べられるし、一石二鳥ですね。
メイン:パイナップルの追熟とそのメカニズム
パイナップルは追熟"は"しないけど…
パイナップルは追熟しないと言われていますが、何を持って熟すると言うかによって意味合いが変わってきます。ネット上では生命工学、食品衛生、発酵生産の技術と知識のない方々が、何の根拠も示さずに追熟しないと言われていますが、実際は追熟に値する反応を類似的に起こさせることができます!
どんなフルーツでも褐変と言われるメイラード反応が起こります。カットしてからさまざまなアミノ酸や化学物質の変化が起きて、程よく酸化が起きると味にも見た目にも変化が起きます。塊のパイナップルには、葉っぱがついているため、木の実として収穫されていても葉っぱ部分に光合成は起きます。
お店に並んでいても生きてます
木の実の状態では、まだ植物として細胞は死んでおらず、種として新しい生命を芽吹かせられるように果実の部分に変化が起こるのは当たり前です。パイナップルとして食べている部分をカットしてみせたように、種が入っているということは、そこは果実なわけです。
種の生育にはじゃがいものように、デンプンに近い成分が多少は必要です。これがいわゆる糖度というものの正体で、種子を成長させるのに効果的なグルコースやフルクトースといった糖分がここに含まれています。機械で測定できる甘味は主にグルコースやフルクトースに由来するもののみです。
パイナップルには糖分は少ないですが、その代わりにアミノ酸や酵素がたくさん含まれています。有名な情報として、パイナップルにはタンパク質分解酵素が含まれていると言われますが、それはなぜだか分かるでしょうか。大豆のように植物性タンパク質を自身で分解して種子の栄養とするためなのは、バカでもわかりますよね。でなければ、含まれている理由になりません。
あるってことは必要だってこと
植物は生きるのに必死ですから、本来は植物に必要ないはずのタンパク質分解酵素を持っている義務はないのですが、パイナップルにはそれがあります。あるということは、植物としてその酵素が必要だったということです。進化の過程で取り残された遺物なのかもしれませんが、代謝に関わる箇所でそれはないでしょう。つまり、タンパク質が分解されて生成される甘味を感じさせるアミノ酸は増えるということができます。
人間が甘いと感じるのは、グルコースやフルクトースだけだと思っていませんか?フルーツの甘味は、白砂糖などグルコースの甘味とちょっと違いますよね。舌の真ん中あたりにとろみを持ちながら感じる甘みがグルコースだと思っているなら、もう一度勉強し直しです。
パイナップルは追熟はしませんが、正しい日光浴と管理の元、時間経過させると甘味は増します。その甘味はフルクトースやグルコースではなく、アミノ酸やそれ以外の成分、メイラード反応などが起こることにより人体が甘いと感じるようにもできるということです。甘さは増加させられます。
ちゃんと調べて研究して
信じられない方は、一から研究し直してください。そして、情報ソースがないままでパイナップルは追熟しないといい切らないこと。追熟の定義からすれば、科学的な表現では追熟とは言えないですが、甘みが増しているのは事実です。
パイナップルはカットした後に冷蔵庫で一定期間保管すると官能試験において甘みが増すことは分かっています。これはアミノ酸などが増えたことによるものでしょう。グルコースやフルクトースなど単糖や二糖が増えることが追熟と表現されるのであれば、パイナップルは追熟はしませんが、糖分以外の甘味を感じさせるアミノ酸などの成分は増えます。
新鮮な酵素を摂取したい方は、甘味の議論は忘れて、カットしたら速攻食べてください。酵素は時間経過で劣化していき、酸素に触れる回数、面積が増えればどんどん酸化していって新鮮さを失っていきます。甘さを取るか、酵素を取るかはアナタ次第ですが、どちらもおいしく食べられるということでは、パイナップルに感謝ですね。
Lactic Fermentation as an Efficient Tool to Enhance the Antioxidant Activity of Tropical Fruit Juices and Teas.:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28489022
Ripening-dependent metabolic changes in the volatiles of pineapple (Ananas comosus (L.) Merr.) fruit: II. Multivariate statistical profiling of pineapple aroma compounds based on comprehensive two-dimensional gas chromatography-mass spectrometry.:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25651901
Heterogeneity in pineapple fruit quality results from plant heterogeneity at flower induction:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4260489/
Enhanced Swelling and Responsive Properties of Pineapple Peel Carboxymethyl Cellulose-g-poly(acrylic acid-co-acrylamide) Superabsorbent Hydrogel by the Introduction of Carclazyte.:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28049294
食品衛生を学んでいれば腐敗と発酵の狭間を維持できる
パイナップルも限界を超えて、日光浴&常温保存すると、ドロンドロンに溶けて腐敗します。根本は水分を含ませたティッシュやスポンジで水分補給させれば保管期間は常温でも少し伸ばせます。当ページで言っている甘味を増やす工夫は、発酵させる作業に近いので、1日中パイナップルをそばにおいて観察して置けるくらいの余裕が無いと完璧にはできません。
私の場合、パイナップルを家庭で3日程度、日光浴、水分補給させつつ保管します。その後、甘い香りがお部屋の中に充満するくらいになったら、タイミングを見て一気にカットします。カットした時に頭の部分に蜜があがってきていれば判断は正しかったと一段回目のチェックができます。お尻からお水を吸収させているのですから、水分とともにお尻近くの密が上がろうとするのは当たり前です。
よくわからない方は中学校の理科で学んだ光合成を思い出してください。植物には光合成と呼吸がありますが、気孔から水蒸気などを吐いて、根っこの方から水分を吸い上げていきます。毛細管現象じゃないですが、人間で言う所の心臓みたいなものです。循環に欠かせないもので、葉っぱは上、水分は下にある状態にすると反応が進んでいきます。
常温保存すれば、どんなに新鮮なものでも腐敗します。ちょっとした人の手を加えると腐敗は発酵にできます。お酒造りと同じです。お酒の場合は、糖分をアルコールに変えさせるわけですが、パイナップルの場合は内部酵素やアミノ酸の増加によってフルーツの中の状態を変化させます。パイナップルの皮が硬くてガッチリしているというのもこれができる要因です。
カットした後には、頭付近にあった実(葉っぱに近い方)は入れ物の下の方に、お尻部分にあったもの(葉っぱから遠い方)は入れ物の上の方に入れましょう。そうすると物理的にどうしてもおしりの方に貯まってしまう密を入れ物の上から下に流すことができて、味が均一になります。おいしいカクテルを作るバーなんかではこうした工夫で、無駄なくおいしいフルーツが食べられていますよね。
パイナップルの性質と特徴
ここでパイナップルの基本を復習。アメリカの熱帯原産のアナクサ類イネ目パイナップル科の多年草で、アナナスやパインと呼ばれることもあります。苗を植えると約1年から1年半で新しいパイナップルの実が取れて、収穫できた実でカットした部分を植えれば再びパイナップルを栽培できます。ただし、植えるたびにパイナップルの実は小さくなっていく上、味も落ちてしまうためだいたい1回から3回収穫したらそれ以上同じ実で栽培することはないようです。
パイナップル100gには糖分10%ほど、炭水化物13.4g(食物繊維1.5g)、タンパク質0.6g、リンゴ酸やクエン酸が合わせて約1%、カルシウム13mg、カリウム109mg、ビタミンC48mgが含まれています。前述のパイナップルのタンパク質分解酵素の名称はブロメライン(bromelain)と呼ばれており、システインプロテアーゼに分類されます。このタンパク質分解酵素ブロメラインは60度ほどで活性を失うため、肉を柔らかくしたい場合は加熱調理前にパイナップルを肉になじませるとよいです。
アミノ酸のうち、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギンは旨味や酸味、グリシン、アラニン、スレオニン、セリン、グルタミンは甘味を感じさせます。バリン、ロイシン、イソロイシン、システインやフェニルアラニン、トリプトファンなどは苦味を感じさせます。パイナップルのタンパク質分解酵素ブロメライン(上記画像)が活性を示すにはシステインが必要で、苦味を持つアミノ酸が必要になるわけです。プロテアーゼはペプチド結合加水分解酵素のことで、大きなタンパク質構造を分解してくれます。
さて、パイナップルに含まれているアミノ酸は100gあたり、トリプトファン5mg、ヒスチジン10mg、スレオニン19mg、イソロイシン19mg、ロイシン24mg、リジン26mg、メチオニン12mg、シスチン14mg、フェニルアラニン21mg、チロシン19mg、バリン24mg、アルギニン19mg、アラニン33mg、アスパラギン酸121mg、グルタミン酸79mg、グリシン24mg、プロリン17mg、セリン35mg含まれています。(USDA National Nutrient Database for Standard Reference, Release 28)
例えば、グルタミン酸は神経伝達物質ともいわれており、純粋な砂糖に比べて甘味を素早く感じると言われています。他にもアミノ酸由来の甘さは脳に伝わる速さが早いため、パイナップルそのものに含まれる糖分が少なくても、ある程度パイナップルに含まれているタンパク質が、それ自身のタンパク質分解酵素で分解されれば、甘さを感じやすくなります。上記の甘みを感じやすいアミノ酸(赤文字のもの)は全体的に量が多く含まれており、甘味・旨味を感じるアスパラギン酸とグルタミン酸は、合計すると他のアミノ酸の10倍位の量も含まれています。
ちなみにグルタミン酸は体内のアンモニアと結合してグルタミンになるため、体内の老廃物を取り除くのにも大いに活躍してくれます。血液の浄化やデトックスにもパイナップルが役立つのにはきちんと根拠があるわけです。
パイナップルのアミノ酸まとめ:https://www.healthaliciousness.com/nutritionfacts/amino-acid-calculator.php?o=09266&t=09266&h=09266&s=&e=&r=
グルタミン酸~神経伝達物質と旨味の元/Glutamic acid:http://aminoacid-wp.jp/c08glutamicacid.html
パイナップルをたくさん食べると舌が痛くなったり、パイナップルを一度にたくさんカットすると指が痛くなるのはシュウ酸カルシウム(針状結晶タイプ)が含まれているためで、山芋なんかのネバネバにも似た形をしているのが原因です。タンパク質分解酵素は過剰摂取すると出血するくらいに粘膜を溶かしちゃうこともあるので、毎日ほどほどの量を食べるほうがいいです。
パイナップルの栽培環境
土壌に影響されることはあまりないと言われていて、そこそこ環境が整っていれば自身で栄養を光合成により補って1mほどの大きな背丈に育ちます。雨水を頭側の葉っぱの付近から吸収するため、パイナップルの実の甘い部分はお尻側に集中しやすいです。葉っぱから流れ落ちて水分を集めるため、根っこから水分を吸収する植物とは変わった性質があります。栽培に適しているのは年間平均気温が20度以上、年間降水量1300mm程度、水はけのよい肥沃な砂質土壌でよく育つそうです。
パイナップルの実に含まれている小さな種を植えても栽培できますが、2年から3年かけてやっと実をつけるため、農業的には効率が悪いです。ただし、それが自然本来の育ち方なので種から育てたパイナップルは価格も高く、おいしさも別格になります。その実も環境によってはやたら大きくなるでしょう。2011年の段階で生産量1位はタイ、2位はブラジル、3位はコスタリカと熱帯付近の国々でよく栽培されています。
歴史的には、15世紀末に西インド諸島で広く栽培されており、1513年にスペインに伝わり、インド航路でアフリカ、アジアにも伝わりました。1558年にはフィリピンに伝わり、1605年にはマカオに、そして1830年に日本の小笠原諸島の父島に伝えられたようです。
Wikipedia「パイナップル」:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%AB
家庭でパイナップルを美味しく食べたい場合は、腐らせることのないように、自由なタイミングでカットして食べてください。パイナップルをおいしくお得に食べられればそれでいいのです。酸っぱいパイナップルも酵素満点、ビタミン満点で美容に良さそうですよね。甘さは特に気にしないよ、という方はタイミングは気にせず、個人のタイミングでパイナップルをカットして味わってみてください。自分でカットしたパイナップルはおいしいですよ!!