アスパルテームの危険性と安全性評価【人工甘味料・食品添加物】
アスパルテーム(Aspartame)の安全摂取量は体重50kgの人で1日2gまで一般的な食品・飲料に含まれる量では危険はほとんどありません。アスパルテーム化学式中にあるメタノールの安全含有量は、食品衛生法では1mg/mlで、実際に500ml中に含まれるアスパルテーム中のメタノール量は0.0063ml(メタノール10mlで失明)と安全範囲内です。
アスパルテームの化学的性質と詳細
アスパルテーム(Aspartame|IUPAC:N-(L-α-アスパルチル)-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル|N-(L-α-Aspartyl)-L-phenylalanine, 1-methyl ester)は、化学式C14H18N2O5、モル質量294.3g/mol、水への溶解度10g/L(20℃)で、ショ糖の200倍~300倍の甘さの人工甘味料です。
原材料表示では、L-フェニルアラニン含有物とのみ記載されている場合もあるとのことです。以下にも記載の通り、フェニルケトン尿症の方は、注意が必要です。
アスパルテームを経口摂取した場合、
- メタノール → ホルムアルデヒド → ギ酸
- L-アスパラギン酸 → グルタミン酸・アスパラギン・グルタミン
- L-フェニルアラニン
と代謝されていきますが、食品添加物としてごく微量しか添加されないため、人体に対する毒性を憂慮するほどの濃度にはならないとされています。フェニルケトン尿症がある方は、フェニルアラニンの代謝に影響が出るため、フェニルケトン尿症を悪化させる恐れがあります。
アスパルテームの危険性評価
アスパルテーム(Aspartame)は、フェニルアラニン(50%)、アスパラギン酸(40%)、メタノール(10%)で構成され、中でもメタノールに対するリスクがあるのではないかと注目されるケースが多いです。
メタノールは、体内でホルムアルデヒド、ギ酸、ジケトピペラジン(Diketopiperazine|発がん性)という物質に代謝されるため、アスパルテームを大量に摂取すると、一部の敏感な人、脳神経系の持病がある人には悪影響が出る可能性があります。フェニルケトン尿症も同様ですが、異常な大量摂取でなければ、それほど大きな毒性とはなりません。
OXFORD ACADEMICの論文によると、アスパルテームの安全な摂取量は、1日40mg/kgとされています。これを体重50kgの大人で換算すると
40mg × 50 = 2000mg/50kg
1日2000mg = 1日2g
と、このようになり、アスパルテームを1日2gまでは摂取しても、一応安全であると判断できます。
メタノールの代謝について
アスパルテームを代謝することで生じるとされるメタノール(CH3OH)は、メタノール単体で大量に摂取すると失明や死亡の可能性がある危険なアルコールであることは事実ですが、ごく微量の場合には、以下の肝臓などでの代謝を経て、排泄されます。
- メタノール → アルコールデヒドロゲナーゼ → ホルムアルデヒド(HCHO)
- ホルムアルデヒド → ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ → ギ酸(HCOOH)
- ギ酸 → 二酸化炭素と水
大量のギ酸があると、代謝性アシドーシスや組織損傷を引き起こしますが、少量の場合には代謝され、被害は出ませんが、代謝するために肝臓に負荷がかかるのは事実です。
メタノールの致死量・許容含有量
メタノールの許容含有量については
- 1mg/ml(食品衛生法)
- 8ppm(IPCS|国際化学物質安全性計画)
とされており、半数致死量LD50は、
LD50(経口):12,900mg/kg(ラット)
とされています。
ニンゲンの大人の場合、メタノールを以下の量、摂取すると
- 経口致死量:50~200ml
- 失明:10~15ml
失明、死亡の危険性があり、主に、メタノールが代謝されてギ酸が急激に増えることが要因で、メタノールそのものも危険ですが、そこから発生するギ酸(HCOOH)による毒性の方が強いです。
メタノールを中毒症状が出るほどに摂取した場合、あえて代謝されやすいエタノールを体内投与し、一度に大量のメタノールが代謝されて、体内のギ酸濃度が急激に上がって危険な状態になるのを抑えている間に、緩やかにメタノールが代謝されて、安全な範囲で代謝されていくのを待つような治療方法があります。
メタノール安全許容量を含む場合の計算実例
仮に、500mlの缶チューハイに、食品衛生法で言われている1mg/mlの濃度のメタノールが入っているとすると
500ml中に500mg
メタノールの比重は0.792(g/cm3)なので、500ml中の500mgを、0.5gに単位換算(1cm3=1ml)し
0.5g ÷ 0.792 = 0.6313ml
となります。失明の危険性がある摂取量は10ml~15mlなので、0.63mlは到底失明には及ばない量です。が、肝臓に持病がある方などはこの限りではないので、むやみに大量摂取して良いわけではありません。
アスパルテーム含有食品での計算実例
アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)を含んでいる商品「カルピスソーダ」においては、入手できる情報(こちら)では100ml中5.0mg~18mgのL-フェニルアラニンを含んでいるとされています。
これがアスパルテームを含んでいるものとすると、アスパルテームが、フェニルアラニン(50%)、アスパラギン酸(40%)、メタノール(10%)で構成されていることを考慮し
- フェニルアラニン:5~18mg
- アスパラギン酸:4~14.4mg
- メタノール:1mg
相当を含んでいると考えてよいでしょう。この場合、前項での計算と比較すると、
- 前項:500ml中に500mg
- 本項:100ml中に1mg(500ml中に5mg)
となるため、前項の100分の1の量のメタノールが含まれている可能性があるといえます。単純計算すると
0.6313ml ÷ 100 = 0.006313ml
のメタノールが、商品「カルピスソーダ」のアスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)の中に含まれていることになります。
致死量のアスパルテームを摂取するには
これを元に、メタノール基準で、経口致死量50mlを「カルピスソーダ(500ml)」で摂取するためには、
50ml ÷ 0.006313 = 7920.16倍
500ml × 7920.16 = 3,960,082ml
3,960,082ml = 3,960L =3,96kL(約4t)
となり、約3,960L(リットル)のカルピスソーダを飲む必要があり、ペットボトルの本数で言えば、カルピスソーダ7920本飲む必要があります。なお、メタノール摂取量10mlの時点で失明が始まるため、カルピスソーダ(500ml)を1,584本飲んだあたりで目が見えなくなり始めます。
これを一般的な身長160cm、体重55kg程度の人間が実現するのは不可能であり、アスパルテームを致死量摂取するのはどう頑張っても無理がありますが、極微量でもアスパルテームの代謝で、ごく微量肝臓への負荷がかかるのは事実です。
アスパルテームがショ糖の200倍の甘さであるため、ショ糖のみでアスパルテームと同じ甘さを出そうと、ショ糖を200倍量摂取するほうが、おそらく肝臓に悪いです。また、既出の通り、フェニルケトン尿症がある方は、アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)を含む飲料・食料は控えた方が良いです。
メタノールを含む、または、メタノールが出る食材・食品
メタノールを微量生じる食品は意外と身近に存在しています。トマト、バナナ、いちごなどのフルーツ、実としてなる野菜系など、カットしてからしばらくするとメタノールが微量生成されます。
このことから、生フルーツ、生野菜などから摂取してしまう微量のメタノール(無視できるほどの微量)もあり、きちんとバランスの取れた食事をしていれば、メタノールについては心配する必要はないでしょう。
アスパルテームの安全性評価
アスパルテーム(Aspartame)及びL-フェニルアラニン化合物を含む清涼飲料水は、健康な一般人が摂取する分にはそれほど毒性はなく、アスパルテームそのものの危険性は大きくありません。ただし、フェニルケトン尿症の方、肝臓が悪い方は、摂取を控えたほうが良いです。
また、1日に4L、6Lのカルピスソーダ、コカ・コーラを飲む方は、摂取量を20%ほどに減らしましょう。アスパルテーム以外の成分、慢性的なリスクがあります。
アスパルテームは、極微量の含有であればほとんど無視してよいですが、一部の方は注意しましょう。
出典・参考
Aspartame: Review of Safety
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0273230002915424
Direct and indirect cellular effects of aspartame on the brain
https://www.nature.com/articles/1602866
Revisiting the safety of aspartame
https://academic.oup.com/nutritionreviews/article/75/9/718/4101228?login=true
ハザード概要シート(案)(メタノール)
https://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/tenka_20.pdf
食品添加物製造基準(厚生省告示第370号 食品、添加物等の規格基準より抜粋)
https://www.ffcr.or.jp/tenka/list/post-16.html
恩賜財団母子愛育会
http://www.boshiaiikukai.jp/img/milk/oshirase5ap2013.pdf
アサヒ飲料|アレルギー・原料・栄養成分一覧
https://www.asahiinryo.co.jp/products/list/nutrition/0012.html
熟度の異なるカットフルーツにおける貯蔵中のエタノール,メタノールの生成
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010927172
指定添加物リスト|公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 事務局
https://www.ffcr.or.jp/tenka/list/post-11.html
各添加物の使用基準及び保存基準|公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 事務局
https://www.ffcr.or.jp/webupload/74a51493d997785a77ea40142cf05a79c6b52db7.pdf
食品添加物|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html
第二世代の糖アルコール
https://www.bfsci.co.jp/pdf/catalogue/03.pdf