ぶどう糖果糖液糖の危険性と正体【食べてはいけないって本当?】

2023年6月4日

ぶどう糖果糖液糖は、グルコースとフルクトースをおよそ1:1の割合で含む食品添加物で、1日の砂糖添加物上限摂取量以上の過剰摂取をすると身体に問題が起こる可能性が高まりますが、通常の摂取ではそれほど危険性はありません。過剰に危険性を煽るのは犯罪なので避け、各自の健康状態に合わせて摂取するかどうか選びましょう。

 

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まえがき

虚偽の風説を流すのは刑法にて「虚偽風説流布業務妨害罪」に関連して

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:e-GOV法令:刑法233条

違法行為です。科学的・化学的根拠なく、食品添加物やそれ以外の如何なる商品・人物・事象に関しても「嘘を広める」言動をすると、医師でも薬剤師でも政治家でもNGです。

 

本記事の「ぶどう糖果糖液糖に関する内容」に反論、賛成のある者(立場に関係なく)は、科学的、客観的、かつ、化学的根拠、作用機序、構造式、化学式等を示した上で、各自のドメイン、ウェブサイト、SNSなどで、紳士淑女的に言葉を選んで反論・持論の展開をご自由に行って下さい。

結論

先に結論をまとめると、以下のような情報とともに、ぶどう糖果糖液糖は別に危険ではありません。

  • ぶどう糖果糖液糖のフルクトース含有量は50%未満
  • ぶどう糖果糖液糖10gあればフルクトースは5g未満
  • フルクトースを過剰摂取すると代謝的に問題はある
  • 代謝的な問題はフルクトースでなくても起こる
  • 砂糖添加物の許容推奨摂取量は1日40g
  • 果糖ぶどう糖液糖」と「高果糖液糖」はやめとけ

問題はぶどう糖果糖液糖を含んでいる食品・既製品の過剰摂取にあり、あなたたち消費者の消費の仕方が問題です。

 

食品中に含まれているぶどう糖果糖液糖の概算量

ここでは、1日の砂糖添加物摂取量上限を、推奨量の40gとして、さまざまな食品に含まれている可能性があるぶどう糖果糖液糖(フルクトース)の量を概算で記載しておきます。ぶどう糖果糖液糖には、グルコースとフルクトースがおよそ1:1で含まれているため、重量の半分をフルクトース量として以下に記載します。

  • 納豆のタレ1パック:1g程度
  • ヤクルト1本:5g程度
  • イオンの味付けポン酢360ml:24g程度
  • HEINZトマトケチャップ567g1本:78g程度
  • R-1ドリンクタイプ1本:6.5g程度

つまり、1日でハインツのトマトケチャップを全量食べきったら、フルクトース摂取量がちょっと多すぎです。そんでなくてもケチャップ食べ過ぎで塩分の方が心配です。1日1本から3本程度の摂取を推定されているヤクルトやR-1なんかは、砂糖添加物の推奨上限摂取量を超えません。納豆のタレは一気に3パック食べたとしてもフルクトース摂取量は足りないので、20パックは食べても大丈夫です。イオンの味付けポン酢を1日で1人で全量飲んだとしてもフルクトースは24g、砂糖添加物の量は約50gなので、ケチャップよりもマシですが、塩分(以下省略)。

 

なお、ここでは果糖ぶどう糖液糖(ぶどう糖果糖液糖とは別もの)については記載しませんし、無意識な摂取をおすすめしません。果糖ぶどう糖液糖を含むアクエリアスなどは、500ml中12g~16g程度のフルクトースが含まれている可能性があるため、ちょっと多いかもしれません。1日3本、朝昼晩、アクエリアスを飲むだけでフルクトース量が砂糖添加物推奨摂取量の40gを超えるのは多すぎです。これに関しては少し気をつけましょう。

 

ちなみに粉末状のポカリスエットはぶどう糖しか入っていないので、ペットボトルで売っているものより味が悪いですが、お砂糖を気にする方には少しマシです。

以下詳細です

ぶどう糖果糖液糖の定義と合成過程

 

ぶどう糖とは

ぶどう糖はグルコースと呼ばれ、化学式C6H12O6で示される単糖で、生命維持に欠かせないものです。グルコースは正確には、その構造(鎖状・環状の区別もある)、形のゆらぎにより

  • α-D-グルコース
  • β-D-グルコース
  • α-L-グルコース
  • β-L-グルコース

という4種類存在しており、人体に必要なのはD-グルコースです。水に溶けた状態では、D-グルコースは「α:β=4:6」程度で平衡しており、αになったり、βになったりしますが、D-グルコースが、いきなりL-グルコースになるようなことは通常状態(実験室or研究者レベルでは可能)ではありません。

 

1747年に干し葡萄から単離された物質で、科学者による重ねての研究によりその存在や用途が明らかにされてきました。

 

自然界では、ぶどう糖が単体で生成されることはほとんどなく「でんぷん」という単糖類がたくさん連なったものとして存在します。人の唾液に含まれているアミラーゼや、麹菌(Aspergillus oryzae)や酵母(Saccharomyces cerevisiae)によって分解されて、単糖に近い形にまで分解されて、解糖系、TCA回路、アルコール発酵や並行複発酵などに応用されます。

 

この単糖の元になるでんぷんを効率的に作る植物は

  • 米(稲)
  • とうもろこし(コーンスターチ)
  • じゃがいも
  • さとうきび
  • フルーツ類
  • かぼちゃ等(瓜系)

などで、最初は必ず「でんぷん」という多糖類の状態で存在し、このでんぷんを分解することで単糖を人の体内やその他の方法で生成して利用します。中でもとうもろこし、コーンスターチは、精製されているグルコース全体の8割を占めるほどの原料です。

 

グルコースイソメラーゼとは

D-グルコースをD-フルクトースに変換する(正確には「D-glucose 6-phosphate」を「D-fructose 6-phosphate」に変換)には、グルコースイソメラーゼ(glucose-6-phosphate isomerase:EC 5.3.1.9)という酵素(タンパク質)が用いられます。

 

この酵素の詳細な構造は「PDBsum entry 1b0z」にてご確認下さい。このグルコースイソメラーゼを使用しても、グルコースとフルクトースは約1:1で平衡を保つため、グルコース全てをフルクトースに変換することはできません。

果糖とは

果糖はフルクトース(fructose|fructopyranose(六員環)|fructofuranose(五員環))と呼ばれ、化学式C6H12O6で示される単糖で、グルコースと化学式は同じですが、画像の通り、少し形が異なります。

  • D-フルクトース
  • α-D-フルクトフラノース
  • β-D-フルクトフラノース(最も甘い)
  • α-D-フルクトピラノース
  • β-D-フルクトピラノース
  • L-フルクトース
  • α-L-フルクトフラノース
  • β-L-フルクトフラノース

というように、複数のフルクトースの仲間が存在します。L-フルクトースは自然界には存在しません。β-フルクトピラノース:β-フルクトフラノース:α-フルクトフラノース=6:3:1の割合で存在し、平衡にあります。

 

フルクトースの複数の構造を示す際に、フルクトフラノース(fructofuranose)、フルクトピラノース(fructopyranose)という表現も使用されます。フルクトースはグルコースよりも鎖状構造を取りやすいですが、鎖状構造を通じて環状にもなるため、特定のどれかの構造のみのフルクトースにするのは困難です。

 

フルクトースを多く含んでいる天然の食材は

  • ハチミツ
  • ブルーベリー
  • ラズベリー
  • ストロベリー
  • メロン

の他、ほとんどのフルーツ類に含まれていて、グルコースと混在しているケースも多いです。フルクトースもグルコースもアルコール発酵の原料となるもので、でんぷんから糖に、糖からエタノールに変えられる過程でも混在して存在します。

 

なぜぶどう糖を果糖に変えたいのか

フルクトースを使いたい理由は、低温でも十分に甘味を感じられるからで、自然界にはフルクトースが少ないからです。世間でよく言われる問題の根源はここ(消費者のわがまま)にあります。

 

近代化に伴って、消費者は、

  • 味が薄いものを嫌う
  • おいしくて安いものを選ぶ
  • 甘くて食べやすいものを選ぶ
  • 日持ちしておいしいものを選ぶ
  • 天然のものを選びたがる

というような、生産者や製造元からするととんでもないわがままを言い続けてきましたし、今もそうです。商品開発や競争において、少しでも甘くておいしくて安いものがあれば、化学薬品が入っていても、添加物が入っていても、そっちを選んできたのは消費者です。(※禁酒法や砂糖の輸出停止なども影響)

 

そして、高いから、味が薄いからと言う理由で、天然の未加工素材に近いものを買わずに捨て置いたのも消費者です。努力していた生産者に適正なお金を支払わずに、工業的に大量生産して、安くておいしいものを選んできたのは消費者です。

 

それをいくら説教しても、消費者はこれまでも、おそらくこれからも変わらないので、危険性はない、低温でもおいしく感じる、十分甘味がある、天然素材から作れるフルクトースを量産する必要が出てきます。

歴史的な事情をかんたんにまとめると

禁酒法やさまざまな束縛、ストレスがあり、お酒が飲めない代わりにストレス発散になる

  • おいしくて
  • 保存ができて
  • 手軽で
  • 食べやすい/飲みやすい

ものがないとやってられなかった時代があったので、少しでも効率的に手軽に甘くておいしい保存も効くものはないか、と生み出されたのが砂糖いっぱいのチョコレートやお菓子類、ジュースです。そのまま、おいしいから、これ飲んでればいいじゃない、と続いてきているのが「今」です。

そうしないと消費者が買わなくなっちゃったので、メーカーもそれで作るしかなくなっちゃったんです。代わりにさまざまな「安全な甘いもの」を生み出してきていますが、結局消費者が欲しがったり、嫌がったりする人が出てくるので、いたちごっこになっています。

全人類が、きゅうりと水だけで、満足できる舌になれば、解決します。

 

異性化糖とは

異性化糖は、先述のグルコースイソメラーゼによって、D-グルコース:D-フルクトース=約1:1の状態になった糖の事を指します。この条件下でもフルクトースは

β-フルクトピラノース:β-フルクトフラノース:α-フルクトフラノース=6:3:1

の割合に平衡してしまい、結局甘味を増す「β-フルクトフラノース」が3割程度にしか届かなかったのですが、グルコースイソメラーゼなどの研究で、フルクトースの割合を増やせるようになったのが現代です。

  • ぶどう糖果糖液糖:フルクトース50%未満
  • 果糖ぶどう糖液糖:フルクトース50%~90%
  • 高果糖液糖:フルクトース90%以上

で、ほとんどは「ぶどう糖果糖液糖」の濃度でも十分な甘味ですが、さらに甘味を出すためには、水分を飛ばしたりクロマトグラフィーで濃縮して「果糖ぶどう糖液糖」という状態や「高果糖液糖」という状態にできます。

※JAS:日本農林規格

 

液糖とは

液糖は、正確には「糖液」といい、サトウキビやとうもろこしを絞った際に出てくるエキス混じりの原液に近いもののことで、大雑把に言えば糖類が溶け込んでいる水です。さらに大雑把に言うと、りんごを素手で握りつぶした時に出てくる甘味もある汁から、不純物を取り除いたものです。甘味がある液体は液糖という呼ばれ方をします。

 

しかし、そのままの絞り汁は細菌、カビ、不純物、食物繊維などが混ざっているため衛生的ではありません。加熱すると糖類は構造が変わったり分解してしまう(グルコース10%溶液は150℃程度1時間で4.5%分解、フルクトース10%溶液は150℃1時間で11%分解)ため、加熱殺菌や処理以外の濾過や精製方法が必要になります。

 

ただし、糖度が高いものは、糖度が高すぎてカビや菌類が生存できないため、糖類の濃度が高ければそれほど食中毒などの心配はありません。(ハチミツとボツリヌス菌のような例外はある。)

ぶどう糖果糖液糖の危険性と安全性

上記の化学的な性質と事情を踏まえて「ぶどう糖果糖液糖」の危険性を論じるとすると

本来は含まれていない、及び、自然界では摂取率の低いフルクトースの過剰摂取による中毒症状、及び、フルクトースの分解や体内での反応による影響

のリスクがどの程度あるかがポイントになります。

 

つまり、フルクトース(β-D-フルクトピラノースとβ-D-フルクトフラノースがフルクトースの9割を占める)が、どの程度人体に影響するかが鍵になります。

 

フルクトース(fructose)の毒性

フルクトースそのものには毒性はありません。フルクトースの過剰摂取で不調を招く可能性はあります。

 

グルコース、及び、フルクトースは次のような代謝経路があると確認されています。各経路でATP、ADP、NADなどが再利用されながら代謝が進んでいきます。以下の図では可逆部分を省略していますが、代謝経路は環境によっては進むだけでなく、戻ることがあります。

※画像をタップ・クリックで拡大

フルクトースは、小腸から吸収されると肝臓にて、フルクトキナーゼにより、フルクトース 1-リン酸に代謝されます。その後、肝臓に存在するB型アルドラーゼにより、フルクトース-1,6-ビスリン酸に変換され、グルコースの解糖系に合流します。

 

このため、フルクトースの利用は、グルコースの代謝経路は見かけ上短くなり、グルコースより先にフルクトースが解糖系の数手先に代謝されます。

 

フルクトースの過剰摂取で起こること

無機リン濃度の減少によってアデニンヌクレオチド分解の律速酵素であるAMP deaminaseの抑制が解除され、アデノシン一リン酸(AMP)の分解が亢進してイノシン一リン酸(IMP)の合成が高まり、イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、尿酸へと順次分解されて、大量の尿酸が生成する

引用元:福岡県薬剤師会

フルクトースを過剰摂取すると、血清尿酸値を上昇させます。ATPの消費が高速で行われると、ATPの再利用が追いつかず、結果的に高尿酸血症を引き起こす可能性があります。

 

アルドラーゼとは

アルドラーゼは嫌気性解糖系酵素で、フルクトース1,6-ビスリン酸をグリセルアルデヒド3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸に可逆的に分解する酵素。アルドラーゼのアイソザイムは3種類あり、

  • A型アルドラーゼ:筋肉・脳
  • B型アルドラーゼ:肝臓・腎臓・小腸上皮
  • C型アルドラーゼ:神経系

存在部位が異なります。フルクトース 1-リン酸を、解糖系経路上のフルクトース-1,6-ビスリン酸に分解するB型アルドラーゼは肝臓に多く存在します。

 

ぶどう糖果糖液糖は危ないの?

ここまでの情報をまとめると、以下のような情報とともに、ぶどう糖果糖液糖は別に危険ではありません。

  • ぶどう糖果糖液糖のフルクトース含有量は50%未満
  • ぶどう糖果糖液糖10gあればフルクトースは5g未満
  • フルクトースを過剰摂取すると代謝的に問題はある
  • 代謝的な問題はフルクトースでなくても起こる
  • 砂糖添加物の許容推奨摂取量は1日40g
  • 「果糖ぶどう糖液糖」と「高果糖液糖」はやめとけ

問題はぶどう糖果糖液糖を含んでいる食品・既製品の過剰摂取にあり、あなたたち消費者の消費の仕方が問題です。

 

また、糖尿病などの持病がある方や肝機能、腎機能障害がある方はそもそもお砂糖も塩分も相当気をつけないといけませんし、医師の診断と処方を受けているはずですので、何を食べるのも危ないです。

 

何事も適度に、をモットーに、おいしく、楽しく、ハッピーな食生活をお楽しみ下さい。

 

出典・参考

ChEBI

https://www.ebi.ac.uk/chebi/init.do

Fructose toxicity: is the science ready for public health actions?

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3695375/

Inborn Errors of Fructose Metabolism. What Can We Learn from Them?

https://www.mdpi.com/2072-6643/9/4/356

Formation of Hydroxymethylfurfural in Domestic High-Fructose Corn Syrup and Its Toxicity to the Honey Bee (Apis mellifera)

https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf9014526

BML|アルドラーゼ

http://uwb01.bml.co.jp/kensa/search/detail/3802217

日本人の糖質摂取量評価方法の開発

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hcs/2013/23/2013_47/_pdf/-char/ja

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Posted by Genussmittel管理者