マルチトールの危険性と安全性評価【人工甘味料・食品添加物】

2022年7月16日2023年7月13日

マルチトール（Maltitol）は、化学式C12H24O11、モル質量344.31g/mol、非常に水に溶けやすい天然にも存在する甘味料（糖アルコール）で、遺伝毒性、発がん性、催奇形性などはありませんが、胎児の発育遅延・体重減少を起こす可能性があるため、妊娠中の方はマルチトールの過剰摂取は控えましょう。

1. マルチトールの化学的性質と詳細
2. マルチトールの危険性評価
3. マルチトールの安全性評価
4. 出典・参考

マルチトールの化学的性質と詳細

マルチトール（Maltitol｜IUPAC：4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトール）は、化学式C₁₂H₂₄O₁₁、モル質量344.31g/mol、非常に水に溶けやすい人工甘味料で、還元麦芽糖とも呼ばれます。水100ml（37℃）に対して200gのマルチトールが溶解します。

マルチトールは、焙煎した麦芽、チコリの葉、トウモロコシ、じゃがいも、穀物などにも含まれており、天然にも存在する成分です。高温環境下でも安定で、褐変反応（メイラード反応）を起こさないため、お菓子類にも利用されます。

マルチトールの危険性評価

マルチトールには、基本的に危険性はありません。

マルチトールの1日の安全摂取量：規制なし

Adults can eat as much as 40 g of maltitol/day with no significant symptoms, while children can consume 15 g.
引用元：https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5227/htm

マルチトールを1日に摂取させる臨床試験結果では、大人は1日40g、子どもは1日15g摂取しても健康上の問題はなかったと報告されています。

Thorough toxicological studies have proven that maltitol is safe for use. The Joint FAO/WHO Expert Committee of Food Additives (JECFA) has assigned it as an acceptable “not specified” daily intake [85,86,87]. It is authorised in most countries for food use, although some countries (EU, USA) have their own particular legal standards and purity specifications for this substance, while others do not and instead follow the Codex Alimentarius specification for maltitol.
引用元：https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5227/htm

マルチトールは、その安全性から、1日の安全摂取量を特に指定する必要がないとされています。一部の国では純度などに制約はありますが、厳しく規制されてはいません。

マルチトールは遺伝毒性・変異原性なし

Regarding maltitol’s possible genotoxicity and teratogenicity, a few decades ago Takizawa and Hachiya [116] stated that maltitol was not mutagenic in Escherichia coli and Salmonella typhimurium strains and did not induce the frequency of micronucleus in mice bone marrow cells.
引用元：https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5227/htm

マルチトールには遺伝毒性も変異原性も催奇形性もないことが分かっています。実験に用いられたのは大腸菌、サルモネラ菌、マウスの骨髄細胞で、それぞれマルチトールによる悪影響は受けなかったとされています。

マルチトールは遺伝毒性・細胞毒性なし

In a study by Canimoglu and Rencuzogullari [118], conducted to reveal the genotoxicity and cytotoxicity of maltitol, rats were intraperitoneally administered with up to 10 g/kg body weight (bw) maltitol concentrations; that is, a very high dose. Despite this dose, maltitol was neither genotoxic nor cytotoxic.
引用元：https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5227/htm

ラットに対して、高用量の「10g/kg」のマルチトールを腹腔内投与した結果、細胞毒性などはなかったと報告されています。非常に高用量のマルチトールの腹腔内投与でも影響がないため、マルチトールによる危険性は低いと考えられます。

マルチトールには胚毒性がある可能性

Maltitol was not shown to be teratogenic, but an embryotoxic influence was demonstrated by reducing the weight of foetuses and inducing growth retardation at a very high concentration (4 g/kg bw) [112].
引用元：https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5227/htm

マルチトールをラットに投与した実験において、催奇形性はなかったと報告されていますが、胎児の発育が遅れる事例はあり、胚毒性がある可能性があります。ラットの胎児（体重は100g～200g）に対して非常に高用量の「4g/kg」にさらされると体重減少などを起こしたと報告されています。

高用量摂取で下痢・妊娠初期には控えるべき

Therefore, at lower doses, it can be inferred that maltitol poses a low risk for humans but may induce diarrhoea when taken at high doses [112]. Additionally, maltitol may induce hyper-glycaemia and lower embryo weight during pregnancy when used at high doses over long periods, particularly during the first trimester of pregnancy [112]. Accordingly, caution must be taken in utilising it at higher concentrations in food and beverages for the health of our generation and future generations.
引用元：https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5227/htm

マルチトールは低用量で摂取する分には、人間に対して何も問題を起こしませんが、異常なまでの高用量を経口摂取すると下痢、腹痛を引き起こす可能性があります。これは、他の安全な食品添加物でも同様です。

また、妊娠中の方には、その子どもの成長異常、成長遅延、体重減少を引き起こす可能性があると報告されていますので、妊娠初期、妊娠中などのタイミングではマルチトールはできる限り摂取しない（過剰摂取しない｜不安ならば少しでも避ける）ほうが良いでしょう。

マルチトールの安全性評価

Its usage does not facilitate tooth decay [6,88,91] because it cannot be fermented by oral bacteria [7,92].
Evidence from previous research works indicates that maltitol can have major anti-hyperglycaemic potential [3,6,97,98].
引用元：https://www.mdpi.com/1660-4601/17/14/5227/htm

マルチトールは、糖アルコールに分類される甘味料で、一部人工的、工業的に、天然の食材から抽出されますが、小腸から吸収されにくく、甘味はショ糖の90%程度で、純粋なグルコース（砂糖）の代替品としてかなり安全に利用できます。

マルチトールは虫歯にもなりにくく、糖尿病患者向けに摂取しても、グルコースに比べて血糖値をそれほど上昇させない甘味料です。