義務教育はムダにはならない【主体性と時代の変化】

2021年10月19日

タイトルの通り、義務教育はムダなのではないかとする論調に対して、複数の目線からムダか、必要か、変えていくべきかを記載しました。まともな大人の世界では、何でもかんでもムダと断定するのは間違いで、ダメな所もあるのは事実ですが、変えていくべきところはある、というのが正しい表現です。変な大人に惑わされないように進むべき道を見定めてください。




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義務教育のムダについて

以下、義務教育が必要である論調と、必要ないとする論調の2つの立場から記載してあります。こうした所の文章を読んで理解できない人が多い場合、また、反論や別の意見を述べる時にカッとなって暴言混じりになるような人がいる場合は、義務教育はあったほうがいいです。

【目線1】社会構造的には義務教育はあった方がよい

 

こちらの人口ピラミッドは政府統計、2019年10月時点のものです。ポイントは以下の通りです。

  • 20歳以下と30~40歳の年代の幅は10万人程度
  • 未成年と親世代の人口がほぼ同じ(核家族化)
  • 30代の年収中央値は275万円~305万円の範囲
  • 親は仕事で精一杯で片親育児には無理がある
  • 高齢者が育児に関わるケースは14%未満(出典リンク

これらの状況から分かるのは、共働きをしないと収入が追いつかず、子どもの学費を十分用意できない上に、義務教育がなくなることによる「親自身による子どもへの教育とサポート」に割ける時間はほとんどないということです。

 

また、高齢者との3世帯生活をしている人の割合は14%のみで、祖父母に子どもを預けることは期待できず、むしろ祖父母の介護を未成年の子どもや親世代がやらないといけない状況で、最初6年間の小学校、3年間の中学校に通う時間が子どもにあれば、子どもに介護を強制させるのを避け、学びの場を用意でき、お昼の食事も栄養士の考えた栄養バランスのよい食事が食べられて、ある程度の運動もして健康な成長の支えになります。

 

【目線2】深い学びや価値観が身につく義務教育は必要

義務教育で学ぶのは複数の視点と価値観です。あくまでマスターすることを目指しているわけではなく、知って、学ぶのが目的です。この点において、マスターすることを重視している教師がいたらその教師は、義務教育段階には向いていない教師です。完ぺきを目指すものではないため、点数付けをする試験にも価値はあまりありません。

  • 国語:読書と想像力と情報発信力
  • 社会:先人の存在と知恵と地理的構造
  • 数学:問題解決と計画性と論理的思考
  • 理科:危険と制御と生態系、また、ミクロ視点
  • 英語:共通言語と異文化と言語構造
  • 保健・体育:病気と身体と安全確保
  • 家庭:生活の知恵と生活力と地道さ
  • 技術:テクノロジーと素材と原料加工の難しさ
  • 音楽:音の文化と構造と世界共通の概念
  • 美術:色・線の知恵と絵画技法と多元的視点

各教科で学べることはこんな所でしょう。もちろん、もっと多くのことに触れ合えますが、まだ自分自身で検索して学ぶ手段と習慣がない子どもに対し、学校のような場所で、人類が今までに残してきた知恵の一部を簡潔に伝えられるのは、非常に有意義なことです。そこには政治的、宗教的色合いはまだあってはいけません。その子が望む場合は良いと思いますが、思想や概念をむやみに書き換えるような目的のものは教育ではなく、洗脳といいます。

 

【目線3】個人の実力を潰して均す義務教育はなくしていい

よくある話ですが、英語と理科はさっぱりできないが、数学と英語だけはめちゃくちゃ得意で常に100点をとる子もいます。この時に、英語と理科に関しての学びは必要ですが、英語と理科でも満点を取らせるような強制的な特訓は必要ありません。伸ばせる所をどんどん伸ばすのが一番です。

 

ただし、どうして点数につながらないのか、分析させ、改善策を考えて実行し、数字という結果につながるような努力への挑戦をさせてあげるのは大切です。これは試行錯誤といいます。世の中、なんとかしたいのに、うまくいかないことはいっぱいあります。そういう事象に出会った時に、子どもの頃の試行錯誤の経験があれば、大人になってから、きっと何かの役に立ちます。

試行錯誤が大切と言える事例

赤ちゃんのお世話をする時に起こる親を悩ませる事象の一つが「泣く」という行為です。この「泣く」行為の原因は、誰にも分かりません。分からないからって、手放していいなんてこともありません。おむつ交換なのか、お腹へったのか、変な音がしただけなのか、どこかがかゆいのか、知らない人が見えただけなのか…。言葉が通じない相手だからこそ、色々試して、解決に導くという努力をするのはとても大切です。

できないことはやらなくていい、という理論は、間違いです。正しいのは「できるように、目を背けずに、工夫する」努力をするということです。何度もいいますが、努力をするのが大切で、必ず100点でなければいけないというのは違います。

 

行きたくない学校には行かない、やりたくないことはやらないを突き詰めると何もできないただのわがままになります。自然界の猫でも、ねずみでも、人間に飼われているイヌでもハムスターでも努力はします。

 

【目線4】受験前提の義務教育はなくていい

公的な義務教育の内容が、高校受験や大学受験を前提にしている場合、また、その期間が長い場合には、それは義務教育ではなく、義務競争教育です。学校の勉強と、出題されるテストの点数で、応用力や問題解決力、そこに至るまでの努力などを計測することはできますが、それが全てではありません。

 

もし、上記の問題解決能力などを重視するのであれば、100億円出して優秀なAIを育てて作製、コピペで1機1000万円の機械を量産したほうがコスパが良いです。人間よりも頑丈で、24時間稼働可能で、人権もないので問題解決だけさせたいのであれば、人間を育てる必要はないです。まして、そういう機械のような人間を義務教育で育てるのはありえません。

 

そういう義務教育は、これからの時代、特に必要ないです。機械やAIにできますので。その段階までいけば、教師も必要ありません。コピペで人間以上の能力の存在を生み出せますので。

義務教育で身につける人間性

義務教育では、友人との交流、人間関係上のトラブルと解決方法、譲歩や我慢、連携する難しさと連携技能、コミュニケーション能力、他人と自分の明確な違い、自分の許容範囲の発見など、受験では見いだせない部分を、子ども自身がある程度余裕のある時間と空間で見つけていくのも大切とされています。人間社会には数字で解決できることと、そうでないものがありますので、そのどちらも解決して、前進していけるようにするのが義務教育の本分です。

 

もし義務教育がなかったらどうなるか

ここでは2021年現在に存在する義務教育という仕組みがそっくりそのまま消滅したらどうなるか、を仮説として記載します。一切の教育がなくなるなんてことは起こり得ないのですが、極端な話をすると、ムダか、必要かを理解するのに大切なヒントが得られます。

1.両親共働きで、未成年の子は家で留守番&勉強

当然ながら、義務教育がなくなれば、先に記載したとおり、多くの家庭では両親共働きで、未成年の子どもは家で留守番することになります。その間に、子どもが自分でオンライン授業や課題を行い、自分で勉強しないといけません。それができたら、もうその時点で十分大人です。それが一番難しいから、世の中に「授業」という形のものがあるんです。

 

2.子どものお昼は家で一人で食べる

両親共働きであれば、子どもはお昼ごはんを、家で一人で食べるか、お昼の時間に親や友達とオンラインビデオ通話しながら、食事することになります。食べ物は親が作って置いていった食事を、電子レンジでチンして温めるのが安全でしょう。

 

子ども一人を、キッチンに立たせて、ガスやIT調理をさせても良いかもしれませんが、火事にならなくても、加熱された金属と液体がそこにあれば大やけどはします。腕力の不足、不器用などが重なれば、腕に大やけどを負ってしまう可能性もあります。その火傷に親が気づくのは夕方かもしれません。

 

3.子どもがこっそり家を抜け出して遊びに出かけても気付かれない

子どもが家に一人でいて、大人しくするなんてことはありません。おもちゃやゲームで遊びますし、好奇心旺盛なので何かと楽しむようになります。お友達がいれば、お外に遊びに行ってしまうかもしれません。

 

その場合、家の鍵は?家の中の電気は?子どもがお外で怪我をした時の対処は?不慮の事故にあった場合は?オートロックで締め出されてしまったら?お外でスマホをなくしたら?親は仕事場を抜け出して即座に駆けつけられますか?

 

学校にいる、または、登下校コース付近にいる、と分かっているというのは、子どもを守るためにとても重要なことです。

 

4.怪しいセールスの訪問があっても対応できない

一人暮らしをした大学生や新社会人なら経験済みだと思いますが、いきなり怪しい宗教の人、牛乳や新聞の勧誘、NHKの勧誘なんかがやってきてしまうこともあります。まだ、セールスならましで、悪意ある空き巣や泥棒目的(また別のもっと身体が傷つく目的だったら?)の人だった場合、子どもはどうしたらよいですか?対処できません。

 

学校にいれば、そういった危険人物から、子どもたちをまとめて保護している状態にできます。親がいない家に一人、よりは、義務教育で学校にいてくれたほうが、子どもが安全です。

 

5.意識が弱くゲームや遊びに走ってしまう

子どもに限らず、そばに、すぐに遊べるゲームやスマホ、タバコ、お菓子があったら我慢したほうがいいのは分かっているのに、手を出しちゃいますよね。大人でも我慢できないのに、家に一人でいる子どもが我慢できるわけはなく、大人の時間コントロールがなければ、まだ子どもには難しいことです。

 

一日中寝ていて、昼夜逆転してしまい、不健康を極める事になってしまうのも良いことではありません。

 

6.運動習慣が身につかない

学校に行っていれば、嫌でも、適度な運動をする時間を作らされます。これは面倒であっても、健康維持のためには必要なことです。この運動時間を確保できないから、大人はぶくぶく太っていって、あまり意味のない食事制限を始めますよね。

 

子どもが一人で家にいて、適切な運動習慣をコントロールするのは難しいです。運動が好きすぎて、一日中休まず運動してれば筋肉疲労とクールダウン不足で怪我をしますし、全く運動しなければ体力不足でそれもまた不健康です。

 

7.生活リズムが崩れて不健康になる

子どもはものすごくたくさん寝ます。夜だけではなく、お昼寝もしたがる子どももいます。いっぱい運動と勉強をして、いっぱい食べて、いっぱい笑って、いっぱい生意気な言葉を発して、いっぱい寝るのが子どもらしい行動です。

 

家に一人でいる時間が増えた子どもは、言葉を発さず、笑わず、寝る時間は自由過ぎる状況になり、朝と夜が中途半端に入れ替わってしまうでしょう。日光を浴びない、家に一人でいてコミュニケーションが減る、など心身ともに不健康です。

 

8.お金に余裕のない家庭は食事・栄養面が疎かになる

両親共働きでもお金が足りない、というケースはよくあります。食事、栄養バランス、適度な教育、安全な場所を義務教育ではかなり低コストで確保できます。一定の収入以下の場合には行政の支援もあります。

 

義務教育が完全になくなった場合、親はその自分の稼ぎだけで「食事、栄養バランス、適度な教育、日中の安全な場所」を確保しないといけません。非常に高額になるため、子どもに環境が用意できなくなり、子どもも働きに出なければいけなくなります。今のアフリカの一部の地域がちょうどそのような状況です。

 

9.地震・火事があっても自宅で子どもだけで生き抜く

ほとんどの場合、気にしなくてもよい確率ですが、もし大地震、隣の家の火事があった場合、子どもは一人で家から脱出、避難できません。重い防災バッグを持って行けず、重い瓦礫に埋もれてしまうと出られません。身体が小さければ瓦礫の隙間から出てこれるかもしれませんが、生き抜くのは大変過ぎます。

 

義務教育があり、学校に行っているときに地震があれば、生き残れる可能性が上がります。東日本大震災のように、緊急過ぎて対応できずに亡くなる場合ももちろんありますが、生き残る確率でいえば、学校のほうが安全です。学校はそのまま避難所になりますので、子どもを最優先で避難所に入れられる状況です。

 

10.人との社会性を築けない

学校はたくさんの同年代がいる場所です。こういう場所では他者との人間関係の築き方や、社会性、うまく折り合いをつける能力などを身につけられます。現代の人間社会が安定しているのは、人間同士が社会性を持ってお互いを尊重しているからです。

 

社会性がなければ、単独で、孤独に生きる以外に、強調する術を知らないので、社会人になった時に現場で役に立たなくなってしまいます。喧嘩でも、仲良しこよしでもよいので、他者との関係を築く力はとても大切です。

 

11.できる子は自分のペースで勉強できる

義務教育がなかった場合、勉強も家事もできる優秀な子は、周りのペースに合わせることなく、どんどん先取り、得意を伸ばす学習ができます。ただし、優秀な子に限ります。なんでも幼いうちから自分でできるという、人生2周めか、3周めの子どもでなければ、この理屈は通じません。

 

12.できる子は自分の強みをさらに伸ばせる

親を含めて、周囲の環境が明らかに邪魔になっているケースは確かにあります。生まれつき持っている天才は、その子の自由に伸ばしてあげるのが一番ですが、我慢や試行錯誤を学ぶ必要があるのは言うまでもありません。

 

我慢や試行錯誤を学びながらも、その子の強みを伸ばすことは可能ですが、義務教育では全体的に伸ばすことを重視するので、せっかくの強みを伸ばす時間が減って、天才が潰れてしまいます。この点、義務教育は融通がきかないので悪質です。その時点で良い先生と巡り会えていると人生は大きく変わりますが。

 

13.部屋にお化けが出ても助けは来ない

子どもがお部屋に、家に、一人でいて、お化けや妖怪、幽霊が出ても、子ども一人では対処できません。大人でも対処が難しいです。ふざけているわけではなく、心霊が存在する場合に、その環境に子どもを放置するのは、影響を受けやすいので危険です。

 

科学的にはお化けは完全に否定できていないので、完全に存在しているとも言えませんが、絶対にいないとは言えない存在です。子どもの心や脳が感じる現象なのであれば、存在していると考えて対処すべきです。

 

14.家に子ども一人と分かれば空き巣・強盗が狙いに来る

強盗や空き巣のような人種は、弱いものしかいないと分かれば当たり前のように襲ってきます。世間全体で、家には子どもしかいないと分かる状況ができると、強盗や空き巣が狙いに来るのは明白で、これは非常に危険です。

 

せめて、空き巣や強盗が来たとしても、家に子どもがいなければ、子どもが襲われる事はなく、モノがけ盗難に合うだけで済みます。命を奪われたり、子どものトラウマになるようなことをされるよりはよほど安全で、マシです。

 

15.共働き親の帰宅後、親に子どもと一緒に遊ぶ体力が足りない

子どもが1日中家にいても、子どもは親と一緒に遊びたいものです。親を大好きなので、親が共働きでヘトヘトになって家に帰ってきても、子どもは自分を褒めて欲しいし、見て欲しい、かまってほしい、そういうものです。

 

義務教育があれば、子どもは他の子と一緒に遊んで、ある程度は疲労を抱えて帰ってくるので、後は休むだけに近い状態になります。それでも親との時間を大切にしたい子どもは多いですが、体力MAX状態の子どもに比べると少し、親としては余裕ができます。

 

義務教育は大学までにしたらいい

ここからは個人的な考えですが、人類の知恵も、科学技術も増えてきて、9年程度の義務教育では学びきれなくなっています。高校の3年間、大学の4年~6年を通しても無理があります。それでも、

  • 小学校:基本中の基本
  • 中学校:応用手前
  • 高校:複雑な応用と専門へ
  • 大学:専門特化と実力へ

という感じに、高校から少しずつその子の特性や興味を拾いつつ、専門分野に特化させられるようにサポート体制を変えて、大学は受験しなくても入れるようにして、研究職や医療、技術者の新人を育てたほうがよいです。

 

高齢者や中年層は多く、研究できるのに研究の現場にいない人とかを講師にして、少子化で減っている子どもをがっつり精鋭にしていったらいいと思います。

 

大学の学費は現状狂ったように高いので、

  • 子どもを育成する機関としての役目
  • 大学の研究機関としての役目

を完全に分離して、研究と論文ひとつ書けるくらいになって卒業後、大学院、博士課程と進みたい人は進めばいいと思います。

 

こうすれば、受験戦争を勝ち抜くための平均化学習とか必要なくなって、その子の得意分野を長い目で伸ばせるようになって、できる子はどんどん高校レベル、大学レベルに特進させてやって、義務教育の期間にいくつも研究論文出させてあげたり、優秀過ぎる子は研究の現場に入れてあげちゃえばいいと思います。

 

もちろん、高校を卒業する18歳くらいでもう働きたい方なんかは自由に選択できるようにしておけばいい話で、少子高齢化して、かつ、大学の役目がブレている、社会的な変化なんかに対応するために教育の現場や制度も変化させればいいだけです。

 

今はまだその変化が起きる前の過渡期で一番子どもにとってはデメリットの多い時期です。周囲の大人が理解を示してサポートしてあげるのが一番です。

 

出典

家族と地域における子育てに関する意識調査報告書

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h25/ishiki/pdf/gaiyo.pdf

 

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Posted by 管理人