ネオテームの危険性と安全性評価【人工甘味料・食品添加物】
ネオテームの1日の安全摂取量(ADI)は1mg/kg、体重50kgの場合0.05g/kgで、腸内細菌への影響などはあるものの、遺伝毒性、発がん性などは報告されていませんが、構造内にL-フェニルアラニンが含まれ、影響はないとされていますが、フェニルケトン尿症の方は大事を取って摂取を控えても良いかもしれません。
ネオテームの化学的性質と詳細
ネオテーム(Neotame|IUPAC:N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル)は、化学式C20H30N2O5、分子量378.46、水への溶解度12.6g/L(25℃)の人工甘味料です。
ネオテームの甘さは、ショ糖(スクロース)の約7,000~13,000倍(出典)で、アメリカのモンサント社により生み出され、2002年にアメリカ食品医薬品局(FDA)で認可、日本では2007年に食品添加物として認可されています。
ネオテームの危険性評価
以下、ネオテームの危険性を見出し別にまとめます。
- 胎児への移行性なし
- 胃液中で安定
- 長期慢性摂取毒性なし
- 生殖毒性なし
- 遺伝毒性・変異原性なし
- 催奇形性なし
など、ネオテームには取り立てて危険は報告されていません。
出典:36ページ移行に記載あり|https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/09/dl/s0918-4d.pdf
ネオテームの発がん性
出典:リンク
マウスとラットに対する試験で、それぞれ104週間一定量のネオテームをエサに混ぜて与えた結果、病理解剖・組織学的検査で、発がん性はなかったとされています。
ネオテームの1日の安全摂取量
ネオテームの NOAEL は、ラットを用いた二世代繁殖試験における F1児動物の低体重を根拠に NOAEL 96.5 mg/kg 体重/日と考えられることから、本物質の ADIは、安全係数を 100 として 1.0 mg/kg 体重/日と評価した。
一方、体重増加抑制については、本物質を高濃度に飼料へ添加したことによる実験動物の嗜好性の低下に起因した摂餌量の減少によるものと判断し、毒性影響とは評価しなかった。ただし、ラットを用いた二世代繁殖試験でみられた授乳初期の F1 児動物における低体重については、親動物に嗜好性の低下はみられず、新生児の成長は母乳に依存していることから、本試験の児の低体重を毒性影響と評価した。
ラットを用いた試験で、二世代繁殖試験において、ラットの子どもに低体重が見受けられたとの報告があります。えさや母乳の甘味よりもネオテームが甘いことで慣れてしまって嗜好性が変わってしまったなどの影響があるかもしれないとのことです。
ネオテームの1日の安全摂取量は1mg/kgと設定されており、これを体重50kgの人間の大人に当てはめると
1 × 50 = 50mg
50mg = 0.05g
となります。ちなみに、アドバンテーム(ショ糖の20000倍の甘さ)の1日の安全摂取量は0.25gで、ネオテーム(ショ糖の約10000倍の甘さ)の方が1日の安全摂取量は低く見積もられています。
ネオテーム摂取で腸内細菌叢に変化あり
We found that a four-week neotame consumption reduced the alpha-diversity and altered the beta-diversity of the gut microbiome. Firmicutes was largely decreased while Bacteroidetes was significantly increased.
ネオテームをマウスに4週間与えた所、マウスの腸内細菌叢に変化があったと報告されています。これが直ちに危険につながるわけではないですが、生活習慣や食事習慣によっては影響を及ぼす可能性はあります。
ネオテームの飲料への含有量(中国の穀物系飲料の場合)
In order to demonstrate the selectivity of the fabricated AgNPs@FP substrate for neotame detection, five common sweeteners (sucrose, xylitol, sucralose, saccharin and sodium cyclamate) were investigated. The neotame concentration was 0.1 g/kg, and the concentration of the other five sweeteners was 100-times higher than neotame.
引用元:https://ietresearch.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1049/mnl.2020.0298
中国の豆乳などの穀物系飲料の中に含まれるネオテーム含有量を調査した論文によると、ネオテームの濃度は0.1g/kgだったと報告されています。他の人工甘味料よりは添加量は100分の1以下ですが、日本の1日の安全摂取量0.05g/kgと比べると、約2倍多く含まれていることになります。
ネオテームの安全性評価
ネオテームの長期保存
ネオテームの安定性については、長期保存試験(25℃/相対湿度 60%、260週間)において、260週間を通して性状、含量等の測定項目でほとんど変化は認められなかった。
ネオテームは長期保存しても問題ないことが分かっています。260週間は、4.986年(約5年)で、5年間保存しても性状に変化はなかったと報告されています。
ネオテームの高温加熱安定性
142℃で8秒間のUHT処理を行った。UHT処理前後の甘味料の含有量を測定し、ミルクにおけるUHT処理がネオテームの安定性に及ぼす影響を検討した。その結果、UHT 処理後のネオテームの残存率は 91.0%、アスパルテームは 69.0%であった。
高温殺菌加熱(UHT)を行った実験では、ネオテームは加熱後に91%が残っていたとされています。8秒間の加熱でこの分解が起きるため、さらに長時間高温で加熱すれば、さらに分解が進みます。これは、殺菌のための加熱目的の甘さの減衰を測定するためのものです。通常のグルコースでも高温加熱すれば分解されます。
炭酸飲料中における分解代謝物
ネオテームを炭酸飲料に入れて8週間放置した実験では、
- N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン(NC-00751)
- N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-β-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル(NC-00764)
- N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-アスパルチミド]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル(NC-00777)
- N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-アスパルチミド]-L-フェニルアラニン(NC-00779)
に分解されたと報告されています。一般の方向けにIUPAC名でこれらの物質がどうなっているのか説明致します。
まず、元のネオテームそのものは
N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル
という名称で、このアスパルチルは、おそらくアスパルテームとネオテームの類似している右側の箇所の繋がりが少し変化していて、かつ、メチルエステルがついたままになったり、外れたりしているものも生じるということです。
物質のつながりに少し回転が加わったり、メチルエステルが外れたりするようなもので、これはネオテームに限らず、他のすべての食品添加物や天然の食材の栄養素でも起きていることです。取り立てて、危険視するものではありません。
L-フェニルアラニン化合物に関する注意喚起の必要性について
上記の代謝物を見てみても、元々のネオテーム:N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステルから、フェニルアラニンがとれていないことがわかります。ネオテームは体内で代謝されても、そのほとんどが
N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン(NC-00751)
として体外に尿として排泄される事がわかっており、Lーフェニルアラニン化合物としての注意喚起をする必要はないと、厚生労働省の資料にも書かれています。
しかし、生活習慣、調理方法、飲酒、喫煙などの組み合わせにより、フェニルアラニンが取れてしまう可能性はあるので、フェニルケトン尿症の方は、念のため、ネオテームの摂取は最小限にしたほうが良いと考えられます。これに関しての十分な研究はされていません。
出典・参考
Rapid and sensitive detection of neotame in instant grain beverages by paper-based silver nanoparticles substrates
https://ietresearch.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1049/mnl.2020.0298
Neotame: discovery, properties, utility
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S030881469900254X
Effects of the Artificial Sweetener Neotame on the Gut Microbiome and Fecal Metabolites in Mice
https://www.mdpi.com/1420-3049/23/2/367
ネオテームの食品添加物の指定に関する添加物部会報告書
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/09/dl/s0918-4d.pdf
ネオテームのL-フェニルアラニン化合物である旨の注意喚起について
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/dl/s1208-18-3-4.pdf
指定添加物リスト|公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 事務局
https://www.ffcr.or.jp/tenka/list/post-11.html
各添加物の使用基準及び保存基準|公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 事務局
https://www.ffcr.or.jp/webupload/74a51493d997785a77ea40142cf05a79c6b52db7.pdf
食品添加物|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html
第二世代の糖アルコール
https://www.bfsci.co.jp/pdf/catalogue/03.pdf